42:粒以外は苦手



「スコール…お願い…」


「駄目だ、ミラベル」


潤んだ瞳に、理性が揺らぐ。


「もう…本当に無理…っ」


「我慢しろ」


「や、だ…っ!」


苦しそうな声に、赤い顔。必死で抵抗されるほど湧く加虐心。



…と、いうのはあながち嘘でもないが。



「粉薬は絶対飲まないから!」


「騒ぐな、安静にしろ」


先ほどからの攻防は薬を飲まないミラベルに無理矢理スコールが飲ませようとするもので。


「せめてオブラートに包んで…」


「だから無いと言っただろう。大人しく飲め」


「飲まなくてもそのうち治る」


「悪化したらどうする気だ?」


治りかけというのが一番危ない。スコールとしては無理にでも飲ませて寝かせたいところなのだが。


「あれ、まだやってたんスか?」


そんな時に、ティーダが部屋へとやって来た。


「絶対飲まない」


ぷいっと布団にくるまった彼女に溜め息をつきながら、仕方ないッスねとミラベルの耳元で言った。


「俺の口移しと、自分で飲むの…どっちが良い?」


「スコール!水!」


やけに低音な声に驚いて、がばりと起き上がるとスコールの手から薬を取った。


「……………まずい」


「よしよし、よく頑張った」


うげーとした顔の彼女を撫でてやるスコールを見ながら、不満げにティーダは言う。


「なーんか傷付く」


「今のは正当防衛だろう」


「ファーストキスが粉薬の口移しなんて酷過ぎる」


「「………」」


大量に水を飲むミラベルの言葉を、2人は胸に刻んだ。


「とにかく、ミラベルはよく無理するんだからちゃんと休めよ!」


「早く寝ろ」


「もう大丈夫だよ。………多分」


もぞもぞと布団を被り直して、そういえば…と。


「いつまで居るの?何か寝にくいんだけど」


年頃の女の部屋に、同い年の男が2人。確かに眠りにくいだろう。


「え、ミラベルが寝付くま「悪かったな。早く出るぞ」


ティーダの首を、スコールが掴んで引き摺る。


「ちょ、スコール!俺は親切で…」


「本当にそう思うならティナにでも頼め」


ずるずるずるずる。
ミラベルの部屋を出て、ティナに先の件を頼んだ後。


「………譲らねー」


「何の話だ」


他が聞いたら意味が分からないであろう言葉を軽く流す。


(まぁ、その言葉…そっくりそのまま返すけどな)



ポーカーフェイスの下で、そう思った。





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