41:在り来たりな一言が
「「ミラベルが倒れた?!」」
ミラベル用にお粥を作っていた時に帰って来たバッツとジタンは声を揃えて言った。
リアクションの大きい彼らとは対照的にスコールは尋ねる。
「大丈夫なのか?」
「あぁ、熱が高いから安静にさせてるが原因は風邪だろうしな。今はティナが看病してる」
「そうか」
いきなりなら何か悪い病気かとも思うが、今回は原因がはっきりしている。
「ただ、ティナがちょっと自責の念に駆られててな。
ミラベルは全然気にしてなかったが…」
「(ケフカを倒す為とは言え、フラッドを放ったのはティナだしな)」
「ティナが“次ケフカ会ったら絶対に消滅させる”って言ってたなー」
「………」
スコールは一瞬だけあの道化を思い出す。
「(まぁ、俺にはどうでも良いか)」
もう会えなくても困るような存在ではないし、カオスの勢力が削がれるならば…ティナを止める理由は皆無だった。
+++
「ミラベルー、お粥なら食べれそうか?」
ティナがミラベルを着替えさせ熱を計っている時、彼はお粥を持ってきた。
「あんま入んないかも」
額に熱冷ましのシートを貼った彼女の頬は赤く、まだ熱が上がるであろうと判断する。
「でも、少しでも食べないと…薬飲めないから」
ちなみに薬はクラウドがモーグリから買って来たらしい。
「はーい」
渋々とはいった感じだが、ミラベルは体を起こす。
「自分で食べられるか?」
壁に背を預ける姿はかなり辛そうに見える。
「大丈夫」
「あ、フリオニールちょっと貸して」
「え?」
ミラベルに渡そうとしたお盆をティナが代わりに受け取って、彼女はスプーンに1口お粥を掬い上げた。
「ミラベル、あーん」
「…う……、」
顔色の悪いミラベルの表情が引きつった。
が…一瞬だけ迷って、結局素直そのまま彼女はスプーンを口にした。
普段よりゆっくりと嚥下して、少しだけ笑う。
「美味しい」
「そうか」
その一言だけで、彼にとっては大きな意味を持つ。
「ティナ、俺は下に居るから何かあったら呼んでくれ。
あ、夕飯になったら呼ぶから」
「えぇ」
病人の部屋にあまり居るべきではないのと、料理当番故フリオニールは部屋を出ようとした。
「フリオ」
扉の取っ手に手をかけた彼を、ミラベルは呼び止めて言った。
「ありがとう」
「…あぁ。早く治せよ」
それだけ返して、彼は部屋を出た。
赤くなった自分の顔の熱も、早く下がるようにと念じながら。
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