40:非常時に弱い
「くしゅっ!」
「大丈夫か?」
今朝からどうも体にダルさが残っていて、外気に触れたくてウォーリアと共に外に出ていた。
「大丈夫」
くしゃみぐらい大したこと無いし、外に出たら少しすっきりした。
「…顔色が悪いぞ」
「気のせいだよ。私はなんともないし」
「………」
納得のいかない表情をされても、大丈夫なものは大丈夫だ。
自分の体は自分が一番よくわかっている。
「ミラベル、やはり安静にすべきで…、」
「ウォーリア?」
途切れた言葉に疑問を持てば、彼は剣を抜いて駆ける。
「走れ、光よ!」
光の柱が向かう先には、イミテーションが1体。
《ああああああああ!!》
濁った悲鳴を上げてイミテーションは消滅する。
「ミラベル、大丈夫か?」
他には気配が無いことを確認して剣をしまいミラベルを振り返る。
「ミラベル?!」
「ん…」
すると、つらそうに身をうずめる彼女の姿。慌てて近寄れば、力なくその身を預けてくる。
「大丈夫…じゃないな」
荒く呼吸を繰り返し、顔色は真っ青な人間が大丈夫なわけがない。
ウォーリアは軽々とミラベルを抱き上げて、住処へと走った。
+++
「フリオニールの淹れる紅茶は格別だね」
「そうか?紅茶なんて誰が淹れても変わらないと思うが」
本日の留守番であるフリオニールとセシルは優雅に紅茶を楽しんでいた。
「いや、やっぱり自分で淹れるより君に淹れて貰う方が美味しいと思うんだよね。
何か特別な淹れ方をしてるんじゃ…」
「まさか。普通にゴールデンルールに従った淹れ方しかしてないぞ」
必ずゴールデンルールでしか紅茶を淹れないのが普通かどうかは人それぞれだが、そんな時。
「誰かいるか?」
珍しく、ウォーリアの切羽詰まった声が響いた。
「「!!」」
瞬時に2人が玄関に向かえば、そこにはウォーリアと彼にお姫様抱っこされているミラベルが居た。
「どうしたんだい?」
セシルの問いに、彼は言う。
「いきなり倒れて顔は青いのに体が熱くてなのに震えていて大丈夫じゃないだろうに大丈夫と言っては咳きをしていやその前にくしゃみもしてたが…ん?私は何が言いたい?」
「取り敢えず落ち着いてくれ」
要領を得ない彼の言葉を全て切り捨て、如何にも具合の悪そうなミラベルを見て状況を察したらしいフリオニールは溜め息混じりに言った。
「多分昨日の一件で熱が出たんだろ。部屋に運んで安静にさせるべきだ」
「分かった」
素直にミラベルを部屋に連れて行く後ろ姿を見て、残された2人は呟いた。
「なんて言うか…、意外と」
「あぁ意外と…」
その先の言葉は、言わないでおいた。
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