壱:school×trouble.m
「滅べ数学」
「黙れミラベル」
数学授業終了時。
ミラベルは今回の中間考査の範囲を述べた数学教師マティウス−−−通称“皇帝”に中指を立てた。
皇帝は本来3年の数学を担当するが、2年で数学を教えていた教師が産休の為に代理となった。
「せいぜい足掻くが良い」
教師らしからぬ台詞を残した皇帝の背に向けて十字を切ったミラベルを見て、隣の席であるスコールは溜め息をつく。
「子供かお前は…」
「だって今回の中間の範囲広過ぎでしょ?!…皇帝のパソコン、試験作成中に爆発しないかな皇帝メインで」
「それは皇帝が爆発してるだろ」
などと何か残念な会話をしていると、スコールの前の席であるティーダは振り向いて言った。
「いや、俺は賛成ッスよ。皇帝メインで爆発するの」
「だよね。絶対今年の球技大会は皇帝にデッドボール喰らわす予定」
ちなみにこの学園の球技大会は、優勝したクラスは教師陣とのガチバトルを行うことが出来る。
数学はともかく運動神経の良いミラベルは皇帝にデッドボールを喰らわす為だけにソフトボールに出場する気だ。
「お前らな…、そんなこと言う前に勉強したらどうだ?」
実は優等生な彼らしい台詞だが、ケロッとした様子でミラベルとティーダは言った。
「え?だってどうせスコールの部屋に行って勉強会でしょ」
「今日から部活は短縮で終わりッスから、終わったら速攻でスコールの部屋集合な!」
「(俺はまだ承諾していないんだが…)」
しかし、言っても仕方ないことである。
考査前に集まって勉強会はいつものパターン。
ちなみに何故スコールの部屋かと言うと、単に綺麗だからである。
ミラベルの部屋も綺麗だが女性の部屋に入るのはちょっと…、と言うワケで。
「数学宜しく、スコール先生」
「あ、俺は英語も頼むッス!」
無邪気な2人の笑みに、教員免許を持たない“先生”は深く溜め息をついた。
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