35:地上で散る火花
1人だけ、当てた人がいる。
「なぁミラベル」
普段はへらっとしてるクセに、鋭い人。
それは何処か無邪気な子供に似ていて、それでいて酷く大人びている。
「ラグナさん?」
「あー、あくまでも俺の勘だから違ってたら悪ぃんだが…」
頭を掻きながら少し戸惑った後、彼は言った。
「ミラベルは孤児じゃなかったか?」
誰にも言うつもりは無かった。
私は元の世界の記憶を全て覚えているけれど、その話は誰にも知らせないつもりでいた。
「なんで…、」
だから、当てられた時は…誤魔化しようがない程に動揺したのだった。
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「って、言っても捨てられたとかじゃないし…あんまり悲観はしてないけどね」
それを証明するかのようにカラリと笑うと、ティーダに両手を握られた。
「ミラベル…俺とあることをすると、あんなんでも良いなら親父が出k「あー!なんか喉の調子悪いなー!」
ティーダの言葉は、フリオニールの騒音とさり気なく彼女の耳を塞いだクラウドによって邪魔された。
「のばら…」
恨めしそうな視線を、しれっとフリオニールは流す。
「???」
不自然過ぎるやり取りに疑問符が浮かぶが、気にした様子もなく腹黒い暗黒騎士は笑った。
「ミラベルは“家族”に憧れてるんだね」
無理矢理感は満載だったが、素直に頷いて続ける。
「うん。だからティーダもだけど、セシルみたいにお兄ちゃんとかも羨ましいなーって思ってたり」
にこっと笑うミラベルの両手を………今度はセシルが握った。
「ミラベル…僕とあることをすると、もれなくあの素敵な兄さんも君n「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」
セシルの言葉は、クラウドの騒音とさり気なく彼女の耳を塞いだティーダによって邪魔された。
「クラウド…」
「すまない、喉の調子が悪くて」
恨めしげなセシルの視線をクラウドはしれっと受け流す。
「なんか……、みんな変」
「気のせいだミラベル」
やっぱり無理矢理な感じでフリオニールは言う。
「帰るぞ」
腑に落ちないが、クラウドはさっさと歩みを進めてしまう。
が、急に振り返ったと思うと…。
「今は、俺達が家族だろ?」
「!」
そう言って、彼はまた歩き始めた。
「うん!」
その背を嬉しそうにミラベルは追い掛け、横を歩く。
−−−−−間違いなくミラベルは気付いていないが、彼はもう1度視線だけこちらに向けた。
“残念だったな”
「「「……………」」」
饒舌な視線に殺意を覚えて、ファイガより熱い火花が散った。
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