30:乙女のピンチ奪回




両手に花、という言葉がありますが。



「ミラベル、あっち行ってみないッスか?」


「お!面白そうだな」



野郎に両手を掴まれてるのは、捕獲された宇宙人のような気分になります。


(………宇宙人も感情とかあるのかな?)


されるがままの私はちょっと現実逃避していた。










「良い風だなー」


「そうッスねー」


場所は次元城。
適当な所で、バッツとティーダに挟まれて私は座っていた。


「………」


「何だよミラベル、黙っちゃって」


「さっきから大人しいッスね?」


言いようのない脱力感に襲われてる私のことなど知らずに彼らは言う。



クレセントレイクから西の城を通って港町プラポカへ。

つまりこの世界の地図の下半分の大陸を軽く一周したのだ。勿論ワープも使ったとは言え、私のHPは赤くなっている。



「………自分の鎖骨にガムテープ貼って考えてみてよ」


「ミラベル、それはひょっとして“自分の胸に手を当てて考えてみろ”ってやつッスか?」


「鎖骨にガムテ貼ったら絵的にかなり残念なことにならないか?」


「いや今ツッコむべきはそこじゃないッスから!」


珍しくツッコミに回るティーダに、恨めしい視線を送る。


「とにかく、私はまともに言葉を使えなくなるぐらい2人に疲れさせられたの!」


「………その表現、卑猥ッスね」


「だな。“言葉使えなく”の辺りが尚更…、」


「何の話?!」


妙に真摯な表情の2人から距離を置こうとした瞬間、両サイドから掴まれる。


「何の話って…、」


「1つしかないッスよね」


「離そう。うん2人共離そうよ、離せばわかるよ」


獲物を狙う眼になりつつある2人に冷や汗をかく。


「俺としてはティーダが邪魔なんだけど…、この際贅沢は言えないか」


「それ、こっちの台詞ッス」


「ちょっと2人共本当に…っ!」



絶体絶命乙女のピンチに現れたのは…、



「これでどうだ!」


「当たれっ!」


巨大な光の刃と光の矢が2人を捉える。


「やり過ぎだっての…」


「冗談キツいッス…」


完全に油断していたバッツとティーダは敗北の台詞を残して倒れた。


「油断も隙もないな」


「大丈夫かミラベル?」


何事もなかったかのようなスコールとフリオニールが怖い。


「うん、私は大丈夫…、だけど」


モロに攻撃を喰らった2人はピクリとも動かない。


「コイツらなら大丈夫だ。加減したし」


「加減…、したんだ…」


1600%本気だった気がするが。


「そろそろ帰るぞ」


スコールがそう促し、立ち上がるがやはり先ほどから2人は動かない。


(大丈夫…なの…?)


心配になって近寄ろうとした私を、フリオニールの手が制する。


「おい、いつまで寝たフリしてるんだ?
置いて行くぞ」


「え?!」


ぎょっとして距離をあけると先ほどまでピクリとも動かない2人がアッサリ起き上がった。


(あ、でも焦げてる)


たまに思うけど、仲間内なのにみんな容赦が無い気がする。


「なーんだ、バレてたッスか」


「ミラベルが近寄ったら襲う気だったのに」


「アッサリと何言ってるんですか自重しなさい大人でしょ!」



呆れたように注意した彼女は知らない。



「…襲う…、ゴクッ…」


「お前も自重しろよ童貞」


スコールの辛辣な言葉が童t…フリオニールを刺したことを。








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