29:譲れないんです



朝。


「ミラベル〜!」


ドンドンドン!ドンドンドン!


部屋の扉をノックするのは、声的にティーダか。


(………)


半分は起きているが、どうも眠い。
起きたくない。


ドンドンドンドンドンドンドン!


「?」


何やらノックの音が不規則、というか。


「ミラベル〜?朝ッスよ!」


ドンドンドン!ドンドンドン!
ドンドンドンドンドンドンドン!


「3・3・7拍子…?」


器用なノックだと思いつつも、私は布団から出ない。

学校で言うなれば、月曜日の朝と同じテンションだ。

今日から1週間がまた始まるのかと思うと布団から出られない。


が。


「ティーダ?何してんだ3・3・7拍子でノックして…」


「バッツ!ミラベルが起きて来ないんスよ!」


会話をしながら3・3・7拍子。
器用だ。


「ミラベル〜?起ーきーろー!」


そしてバッツも同じようにノックする。
勿論3・3・7拍子で。


「う゛〜」


2度寝しようにも、外からのダブル3・3・7拍子が気になって仕方ない。


ドンドンドン!ドンドンドン!
ドンドンドンドンドンドンドン!


「無理」


低く呻いて、布団から跳ね起きる。


「ティーダ、バッツ!もう起きたからそのノック止めて!」


扉の向こうに聞こえる声を出せば、ピタリと音は止んだ。


「ちぇー次は11拍子だったのに」


「いやいやいやいや」


バッツの残念そうな声音に頬が引きつる。
何が悲しくて朝からそんなハイなテンションになる必要があるのか。


「直ぐ降りるから先に行っててよ」


パジャマ代わりの室内着を脱ぎ捨てて言った。


(うーん、本当に実行しそうだな11拍子)


今夜は早く寝ようと心に決めて、私は着替えた。















本日はバッツとティーダと出ていて、この辺りのひずみは解放が終わった。


穏やかに吹く風に髪を遊ばせていると、急にバッツに手を引かれた。


「あっちの方行ってみようぜ!」


されるがままについて行こうとすると、首もとを引っ張られた。


「ちょっと待った」


「うっ!」


普段、私は制服のブラウスのボタンの上2つは開けている。

しかし、この世界に来てからは学校の先生よりも厳しい人物によってかなり模範的な生徒の格好になっている。

ので、首もとを引っ張られるとちょっと苦しい。


「ティーダ、苦しい」


片手でネクタイを緩め、ボタンを開ける。


「あ、悪ィ!」


慌てて手を離すが、今度はバッツとは反対の腕を掴まれた。


「ティーダ、その手を離せよ」


「バッツの思惑通りになんかさせないッスよ」


「いや2人共離してよ。あと地味に力込めないで地味に痛いから」


何か彼らの視線の間に火花が散ってる錯覚が見える。


「ティーダが離したら離す」「バッツが離したら離す」


見事なまでのハモリに脱力しかける。


「いいから離そうよ!2人共子供じゃないんだから!」


「男はいつまでも子供だろ?」


「俺まだ17ッスから」


(絶対ウォーリアとセシルにチクろう)





私はそう決心しつつも、2人のやり取りを脱力しながら眺めるのだった。












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