00:彼らの場合
ミラベルの知らない、“彼ら”との記憶がある。
いきなりミラベルが幼子になった。
原因は分からないが、まぁなったものは仕方ないだろと“彼ら”はあっさりその事態を受け入れた。
「らぐーっ!」
「んー、ミラベルどうした?」
後ろからてけてけと付いてくる幼子を抱き上げてラグナは笑った。
「どこいくの?」
「今日はライト達とグルグ旧火山帯の辺りだな。ミラベルも来るか?」
「いってもだいじょうぶ?」
彼らはけしてミラベルをないがしろにはしないが、危ない場所には絶対に連れて行かないため一緒に行ける場所と行けない場所がある。
「カイン、大丈夫だよな?」
自分の一存では決定出来ないので、丁度出る準備を終えたらしい竜騎士と召喚士に尋ねる。
「そんなに危険じゃないしな。別に構わんぞ」
「最近はずっと留守番でしたからね。
たまには外出もさせたいですし」
2人の賛同に笑みを深め、ラグナは言う。
「だとさミラベル。今日は外を満喫出来るぞ〜」
「うん!」
嬉しそうなミラベルを見て、ユウナは言った。
「まるで親子ですね」
「お〜、それは光栄だね。こんなに可愛い子なら大歓迎だ」
その言葉に嬉々とするラグナに、見回りから戻ってきたライトニングが言った。
「その場合ミラベルは母親似だな」
「あ、言われると思った」
そう言って、彼らは笑いあった。
「………」
うとうとし始めたミラベルを見て、カインは言った。
「もう寝たらどうだ?」
今日は久しぶりに外に出て、幼いその身には疲れが溜まっているだろう。
「や…」
だが、小さく首を振って彼女はカインの傍を離れない。
「もっと、いっしょにいるの。いつまでいられるか…わかんない、から…」
そのまま寝息をたて始めたミラベルから、彼は目が離せなかった。
「……………」
子供というのは、時折怖い。
(いつまで一緒にいられるか分からない、か…)
本格的に眠ってしまったらしいミラベルを抱き上げて、彼は薄く笑った。
「出来る限りは、一緒にいてやる」
そう呟くと、腕の中の子供は確かに頷いた。
まだ、穏やかな風を感じられた頃の“彼ら”と過ごした日々の話。
[ 46/63 ]