20:スケープゴート
ゴルベーザさんと話終えて、帰ろうとしていた時(迎えは途中で合流する予定)
「こんな所に1人でいて大丈夫なのか?」
「おっさん!」
重厚な鎧と大剣を持った人物がいた。
「………その呼び方はやめよ」
「良いじゃん呼びやすいし」
ちなみにミラベルがカオス陣にさん付けするのはゴルベーザとジェクトだけで、あとはあだ名か呼び捨てである。
「儂はお主をどうこうするつもりは無いが、近くにケフカがおったぞ」
その言葉に、彼女はかなり嫌な顔をする。
「うっわ、速く逃げよう。忠告ありがとうおっさん!」
そのまま踵を返して走り去るのを見届けたガーランドは呟いた。
「………変わった娘だ」
この自分を恐れもしないどころか、礼さえ述べるのだから。
もし戦ったなら、魔法ダメージカット100%の彼女が勝つかもしれないが、ミラベルはケフカが嫌いである。
(速く逃げないと)
速度を落とさず駆けていると、目前に目に入れたくもない存在がいた。
「あのおっさんが余計なことしたみたいだけどぉ、逃・が・さ・な・いよ〜♪」
嬉々とした表情の気持ち悪い道化師が、丁度ミラベルの走路に立っていた。
「あ〜そびま…ッ」
「邪魔!」
速度を落とさずに踏み切り、走り幅跳びの要領で飛び蹴る。
「相変わらず釣れないんだからぁ」
軽く避けたケフカをシカトして、私はまた駆け出す。
「ぼくちん、そんなに嫌われてるの?」
「嫌いじゃないよ。生理的に無理」
駆ける彼女の横を涼しい顔で飛ぶ道化は、初対面から生理的に受け付けなかった。
「なんだろーね、腹立つ」
「嫌い嫌いも好きのうちって言うじゃない?」
「私は素直だから好き嫌いハッキリ言ってるよ」
「またまたぁ〜そんなこと言っ…!!」
飛んでいたケフカが止まった。
なんとなく気になって彼女は振り向くと…
「悲しみの水泡よ!」
「波動を!」
水の柱が噴き出し、暗黒の炎が駆け抜ける…っ!
「ミラベル!」
「ティナ!セシル!」
ふわ…っと天から降り立ちティナは私に抱き付く。
「良かった無事で」
花のような笑みが可愛らしい。
「大丈夫かい?」
「うん、平気」
パラティンへと変わったセシルも私に駆け寄り、言う。
「兄さんから聞いたよ。全部アイツが仕組んだんだろ?」
「………」
アイツとは、ケフカのことだろう。
と言うか、あの道化が簡単に死ぬとは思えないがさっきから反応がない。
(ゴルベーザさん、ケフカを売ったな…)
心中呟きながらも別に良いかと思い、その誤解はとかないでおいた。
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