16:約束〜last episode〜






「ミラベルは、どうなるんでしょうか?」


泣き疲れたミラベルを眠らせ、4人は外で火を囲んでいた。


「どう…って?」


ユウナの疑問に、ヴァンは火を掻きながら返す。


「ミラベルはコスモスにもカオスにも属さない。だから、勝ちも負けもしない。

なら、私達が消えた後…ミラベルはどうなるんでしょう?」



自分達は敗北に向かっている。…次に勝利を託すために。


そして、今眠っている仲間たちは記憶を失って復活する。


けれど、彼女は…。



「浄化とやらはされないんだろうし、今までの記憶を持ったまま−−−記憶のなくなった仲間と共に過ごすことになる…、のか?」


「…かもな」


その予想に、閃光は重く同意した。


「でもよ、」


今まで黙っていたラグナは言った。


「俺達のことも、忘れないでいてくれるってことだろ?」


俺は、と彼は続ける。


「出来ることなら覚えておいて欲しいな。

だって寂しいだろ?みんな俺達のことを忘れちまうなんて」


「それって…ミラベルが一番辛い思いをするんじゃないですか?

いっそのこと、私達のことを忘れてしまった方が、」


自らが辛いかのようなユウナに、諭すように彼は語る。


「なら、ユウナは大事な人がいなくなるなら…それまでの大切な記憶ごとなくなった方が良いと思うか?」


「それは…っ」


否定しかける彼女に、ゆっくりと言う。


「“アイツ”にも言ったが…、どこに居ようと出会ったからには別れがくる。

別れる一瞬は確かに辛い。
けどな、だからって今までのずっと長くて楽しい時間まで無くすことはないと俺は思うぜ」


「………ラグナにしてはまともなこと言うなぁ」


「ヴァン?俺はいつだってまともだぜ?」


男2人のやり取りを華麗なまでに無視して、ライトニングはユウナを見た。


「心配することはないさ。ミラベルは私達が思う以上に強い」


その言葉に、ユウナは頷いた。


「そうですよね。ミラベルは、強い」


「そうそう…ってことで若い子はもうお休みなさい。
ヴァンが見張りしてるから」


「俺かよ!」



そうして、彼らは笑った。















+++











−−−翌日。



「行くの…?」


「あぁ、お前はウォーリアの傍にいろ」


次元の扉に向かうライトニング達に、私は目をそらせない。


「なぁミラベル、頼みがあるんだ」


いつもと変わらない笑みで、ラグナは私の頭に手を置く。


「頼み…?」


小首を傾げれば、ユウナが続ける。


「私達は、きっと消滅します。復活も望めない本当の消滅。

だから…」


「見届けて欲しいんだ。この戦いの結末を」


真っ直ぐな瞳で、ヴァンが紡ぐ。


「この戦いを終わらせるって約束したんだ。

俺は終わりを見れないから、ミラベルが俺の代わりにさ」


「………うん」


小さな声で、けど確かに私は頷いた。



「見届けるよ、本当の最後まで」


「頼んだ」



ぎゅっと、拳を握り締める。



「カインとティファに会ったら、よろしく」


あの2人とは合流してないけど、きっとライトニング達と会うだろうから。



「あぁ」


彼女が頷いたあと、思い出したようにラグナは言った。


「あっ、そうそう。ミラベルにもう1つ頼みがあるんだ」


大したことじゃないんだけどな、と。


「スコールのこと宜しくな。アイツ俺の息子なんだ」


コソッと言われた台詞は初耳で。


「え?!」


衝撃の事実に驚いていると、ぽんぽんと頭を叩いて彼は言う。


「じゃ、行ってくるわ」


「あ…、」


最後だと、わかっていた。

でも、本当は違っていればいいと思っていた。


「ミラベル、じゃあな!」


「無事でいて下さい」


泣きそうになるのを、全力で堪えた。
今泣いたら、不安にさせてしまうから。


「あとのこと、頼んだからな」


「うん」


まだ、ダメ。
込み上げてくる感情を必死で抑える。


振り向き手を振る彼らに、大きく両腕を振った。


「〜っ、いってらっしゃい!」


瞳から溢れるのをそのままに、私は叫んだ。





行かないでと言いたかった。

でも、本当はひょっこり戻ってくるんじゃないかと………気休めでも信じていたくて。


また逢えるのだと願った。





















その願いは叶わないのだけど。













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