14:記憶〜episode 012〜





「ミラベル…っ!今まで一体どこに!!」


「本当にゴメンナサイ許して」


途中までカインに送ってもらい、聖域付近を1人で歩いているのをライトニングとユウナに発見された。


「本当に心配したんですからね」


ユウナに悲しそうな顔をされて、私は焦った。


「いや、ちょっと道に迷って…」


我ながら苦し紛れの言い訳…だと思っていたのだが。


「なら仕方ないって。ミラベルは方向音痴なんだから」


ヴァンの助け舟(?)により、ライトニングは大きく溜め息をついた。


「…まぁ、自ら迷ったと自覚が出来たなら良い方か。
次からは気をつけろよ」


「はーい」


だから私は方向音痴じゃないのに…と思いつつも返事をした。



「ところでミラベル、実はな…」



頭をかきながら、ラグナさんは私を見る。


普段のふざけた様子ではない雰囲気に、私は静かにその続きを待った。





「悪いが…、お別れだ」





苦笑と共に言われた言葉の−−−意味がわからない。



「はい?」



我ながら間の抜けた声だったとは思う。


一瞬で頭の中の何かが一気に外れたみたいに、脳内が混乱する。



(ねぇ、お願い)





誰でも良いから、否定してよ。






+++









−−−秩序の聖域。





「あの子は…、どちらにも属さない。
私もカオスも彼女を喚んではいない」


「コスモス…?」


調和の神の傍に控える光の戦士は、主の呟きを聞いていた。


「その意味を…、ずっと考えていました。
なぜ今回の戦いで彼女が現れたのか、どちらにも属さないのかを」


「……………」


それはウォーリア自身も考えていたこと。


魔法が利かない以外、戦う術もなくて。

誰かを傷つけることも、自らが傷つくことも畏れて………戦力としては何の役にも立たない非力な少女が何故この世界にいるのかと。


(カインは、気紛れな神の悪戯だと言っていたが…)


それだけではないような気がして。



「彼女は浄化されず、元いた世界の記憶も、この世界の記憶も………何も無くしはしない。

そして何より、誰の敵でも味方でもない」




彼女は、終幕までの物語を記憶するための存在なのではないだろうか。










+++





「…そういえば、そうだった」


そう呟いた私の声は、誰の耳にも届かずに消える。


(もう、思い出したくない…)


忘れたままでいさせて欲しいと願うのは、思い出した断片すら私には辛すぎるから。


だってこの記憶は………、



「せっかく、忘れてたのに。
どーせならずっと忘れていた方が、幸せだったかも」
















敗北へと続くのだから。




















ザザ…ザザザ…ザッ
ザザザ…ザザザザザ

ザ…ザザザザ…ザザ
ザザザ……ザザッ!





ザーーーーーーーー










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