13:忘却〜episode 012〜
「…そういえば、そうだった」
そう呟いた私の声は、誰の耳にも届かずに消える。
(もう、思い出したくない…)
忘れたままでいさせて欲しいと願うのは、思い出した断片すら私には辛すぎるから。
だってこの記憶は………、
「導きの光よ…っ!」
「爆撃ぃーっ!!」
ユウナの召喚したヴァルファーレが縦長の火柱を一気に立ち上がらせ、ラグナさんの指示に応えるように天からビームが振り注ぐ。
「…っわ、」
爆風に目を閉じれば、その背をライトニングに支えられる。
「また派手にやったな…」
あれほどのイミテーションが蹴散らされる様を見て、彼女は感想をもらす。
「だが、コイツらはどれだけ居るんだ?」
カインの疑問に、ユウナは不安げに言う。
「結構な数、倒してますよね」
「無限ってこたぁ、ねーだろうが…流石に疲れてきたな」
ラグナさんも苦笑気味に言ってはいるが、本心では辟易してるだろう。
「…ライト、」
私の背を支えてくれていたライトニングは、一言だけ呟いた。
「やるしかないなら、やるだけだ」
−−−その時は、ラグナさんと同じようにイミテーションはいつか居なくなると思ってた。
ライト達がこの戦いを終わらせてくれると信じていた。
+++
イミテーションが無限の軍勢だとわかって、ライトニング達がバラバラになって。
カインが裏切って。
私は誰にも言わずに1人、カインを探し回った。
「だから、裏切るような真似したの」
−−−劇場艇プリマビスタ。
その階段に私は座り、探し人を見下ろす。
「信じるのか、この話を?」
裏切りの理由を話した彼は、そう尋ねる。
「私がライトに叱られるのを承知で1人、しかも魔法は喰らわなくても戦えない私が1人で!イミテーションから必死で逃げて、ようやくカインのこと見つけたって言うのに…」
階段から飛び降りて、真正面から睨みつけるように向き合った。
「嘘なんてついたらぶん殴る」
「………ついでに、ラグナに負けず劣らず方向音痴だしな」
軽く笑いながら、カインは言った。
「私、方向音痴だっけ…?」
「………」
黙ってしまったカインをそのままに、でも…と呟いた。
「私は、どうなるんだろう?」
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