12:迷子〜episode 012〜
−−−忘れられない記憶がある。
「………」
「目が覚めたか」
私の横には桜色の髪をした女剣士が座っていた。
「“ライト”…」
−−−また、この感覚。
知らないはずなのに、知っている。
「私…」
「また倒れた。お前はもう少し自分を大切にしろ」
口調こそ冷たいが、彼女が自分を心配しているのが分かってるので、決して不快ではない。
「…ごめんなさい」
謝れば、ライトニングは私の傍まで来て頭を撫でる。
「謝ることはない。
それより今日はもう寝ろ」
「うん、おやすみ」
そう言えば、彼女は薄く笑う。
「おやすみ」
眠りにつくテントの中で、ふと私の中で霧が晴れるような感覚がした。
「あっ」
−−−忘れられない記憶がある。
彼らと過ごした時は、かけがえのない大切な時間。
戦いの状況は厳しかったけど、私はそれでも幸せだった。
(どうして…)
忘れていたんだろう?
+++
「俺のせいだ…」
イミテーションを一掃したティーダは、自らの疲労を気にもせず唇を噛んだ。
「俺が…っ!」
デジョントラップに落ちた彼女は、未だに見つからない。
「(……………普通なら、もう出てきてもおかしくない)」
自分たちがデジョントラップに嵌った時、一定時間後に多少のダメージと共に吐き出される。
なのに…。
「此処にいても仕方ない。手分けして探すぞ」
もしかしたら、別の場所にいるかもしれない。
そう、一縷の願いをかけて。
「ティーダ、お前は此処にいろ」
有無を言わさぬ口調のクラウドは続ける。
「此処に戻ってくるかもしれないからな」
「…っ、」
何か言いかけて、彼は頷く。
「了解ッス」
「………」
立ち去り際に、スコールは無言のままその肩を叩いた。
「ミラベル…っ!」
頼むから、無事でいてくれ。
+++
「?」
「ミラベル、どうしたの?」
グルグ旧火山帯のひずみを解放するのに、私はティファと共に居た。
(ティーダ…?)
呼ばれたような気がするが、きっと気のせいだ。
(だって、ティーダは)
“まだ”カオス側の人間なのだから。
(あれ、でもなんでコスモス側になったんだっけ…?)
それ以前になんで彼がコスモス側になることを私は知ってる?
そもそもなんで彼が私を知ってる?
「ミラベル?」
不安そうなティファの声に、現実に戻さないる。
「あ、ゴメン。ぼんやりしちゃって…」
慌てて手を振れば、彼女は柔らかく言った。
「疲れたら遠慮なく言ってね?」
「うん、大丈夫」
それに返すように笑うが、心は揺れていた。
(どっちが夢、だっけ…?)
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