11:危機〜episode 012〜
「ミラベルー?大丈夫ッスか?」
「え、あ、うん。大丈夫だよ?」
ミラベルにクラウド、17歳コンビことスコールとティーダの4人は、クリスタルワールドに居た。
「上の空、だな」
「あぁ」
先を行くミラベルとティーダのやり取りを見ながら、クラウドは続けた。
「また、夢を見たらしい。前みたいな曖昧なヤツじゃなくてハッキリとした夢を」
「………夢、か」
スコールは少し考える。
「(俺も元いた世界であったな。ただの夢じゃなくて…)」
最近思い出した記憶に、ただの夢ではない夢を見る自分がいた。
ただ、ハッキリとは思い出していないから内容までは覚えていないが。
「(いや、悪戯に困らせるだけか…)」
自分でもハッキリしないことを告げても、彼女の力にはなれない。
「何か心当たりでも…」
スコールの様子を気に止めたクラウドが問い掛ける………その時。
−−−シュウウ…ッ!!
「面倒なことになりそうだ」
「なりふり構ってられないか」
湧いて出たイミテーションに焦ることもなく、2人は剣を構える。
「ミラベル、下がって」
同じくティーダもミラベルを庇うように武器を構える…が。
「やれるか?この数」
その問いにクラウドは軽く答える。
「さぁ…?あと1匹増えたら苦しいかもな」
その答えにスコールは薄く笑う。
「…その時は俺が1匹多く倒すさ」
「なんだ、お前も戦うのか」
−−−背中合わせの2人は軽口を叩くが、周りのイミテーションの数は多い…いや、多過ぎる。
「ちょっと、そこの2人!そんなこと言ってる場合ッスか?!」
ティーダはブリッツボールを敵にぶつけながら叫ぶ。
しかしその叫びに答えはなく、2人は辺りを蹴散らし始めていた。
「弾けろっ!」
「はぁ…っ!」
エアリアルサークルが爆発し、ブレイバーがイミテーションを貫く。
「浴びときな…っ!」
ティーダは相手を踏みつけ、光の雨を降らせる。
「オマケだ!」
そのまま地面に着地した彼は、ミラベルを探す。
「…っ!」
見覚えのないイミテーションの放つ拳を間一髪で避けた彼女を見つけ、その敵にジェクトシュートを放つ。
「大丈夫か?!」
駆け寄れば、小さく頷かれる。
魔法は一切効かなくても、物理攻撃は大ダメージだ。
震えるその身を抱えて、一旦イミテーションの居ない場へと向かう。
「此処にいろ」
「うん」
その返事を聞いて、彼はまた敵の中に突っ込んでいく。
「(……………)」
何も出来ないもどかしさを痛感しながら、ミラベルは彼らを見ていることしか出来ない。
《この力で…っ!》
くぐもった叫びはティナのイミテーション。
花のような彼女とは似て非なる存在が、大きな火球を発射する。
「避けろ!」
クラウドの声に応えるように、スコールはその身を捻らせる。
ピンボールのように不規則に飛び跳ねるそれは、クリスタルワールドのあちこちを破壊し…こちらに向かってくる。
「(大丈夫、私なら…)」
ティナ本人のメルトン(最大)を近距離で放たれた時に比べたらこれぐらい…。
しかし。
−−−−−パリン…ッ!!
「〜〜〜〜〜っ?!!」
不規則に動くそれは…、彼女ではなくその足元のクリスタルを砕く。
「「「ミラベル…っ!!」」」
いやそんな声揃えなくても、なんて言える余裕は彼女にはない。
−−−−−重力に従って、落ちるだけ。
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