09:予感〜episode 012〜



ザザ…ザザザザ…ッ
ザザザ…ザザ…ザ…



『……なら………だ』


ノイズが邪魔で、聞こえない。
視界がぼやけて、見えない。


『そう……な、………えば』


『………も、…だろ?』


分からない。
貴方達は、一体誰?

何を伝えようとしているの?


『………しか、…ない』


ザザザザ…ザザ…ッ
ザザ…ザザザ…ザ…


ノイズが酷くなる。
まるで聞かれてはいけない会話を遮るかのように。


ザザ…ザ…ザザザザッ!
ザザザ…ザ…ザザッ!!


止めて。邪魔をしないで。
聞かなければいけないの。

貴方のその言葉を、私は聞き逃してはいけない。



『頼んだ』



ザザザザッ、ザザザッ
ザ…ザザッザザザザッ















「−−−…‥」


珍しく、夢を見た。
ノイズが邪魔で視界がぼやけて、見たとは言えない夢かもしれないけど。


「“頼んだ”って、何を…?」



耳に残った最後の一言が、どうしても気になって仕方ない。



−−−ドンドンドン!



「ミラベルー!朝だぞー、起きろー!」


「ん、今いくー!」


バッツの声と扉を壊す気かと思われるノックに返事をして、私は布団を出た。





+++





「珍しいね、ミラベルが寝坊なんて」


「変な夢…見たからかな?」


本日の私と共に食器洗い当番であるセシルに泡のついた食器を渡す。

それをすすぎながら、彼は言う。


「変な夢…?」


最後の皿を洗いながら、私は応える。


「誰かが、何か大事なことを私に伝えようとしてるのにノイズが邪魔で聞こえなくて…」



−−−『頼んだ』。
それは、切なる願いのようで。



「ミラベル?」


ぼんやりと手が止まった私を見て、セシルが怪訝そうに顔を覗き込んだ。


「何か頼まれたんだけど…、」


それが何か思い出せない。


(凄く…、大事なことだった気がする)


そうでなければ、こんなに気になるハズがない。















「俺、こっちの世界に来てから夢なんて見てないなー」


「俺もだな。…夢、か」


私は今、バッツとクラウドと共に次元城にいた。


「なんか、スッゴい大切なことを忘れてる気がするんだよね」


今まで覚えてる限り夢なんて見なかった。
それが、急に。


「そーいやさ、ミラベルは元の世界の記憶はあるのか?」


次元城の縁に座っていたバッツが、顔だけこちらに向ける。


「取り敢えずはあるよ?
学生なことも、1人暮らしなことも、期末テストでの現代文の点数も覚えてる」


「…なら、元の世界で何か頼まれた覚えは?」


クラウドの問いに、あ、と声を洩らす。


「そっか元の世界で頼まれたことを忘れてるから気になるの…かな?」


「いや俺達に聞かれても」


よっと立ち上がったバッツは続けた。


「そんな気にしたって仕方ないぜ?
俺達なんて元の世界のことなんか殆ど覚えちゃいない。
それに比べたら……っ!!」


言葉の途中でバッツは途切り、その場から飛び退いた。


「ミラベル下がれ…っ!」


既に大剣を構えたクラウドの背に隠れ見れば、数体のイミテーションがこちらに向かって来る…っ!!


「クラウド、ミラベルを頼むぞ!」


そう言ってバッツは跳び、大きな赤い銃を出した。


「あったれー!」


銃口からはエネルギーの刃が放たれ、イミテーションを斬る。


「動くなよ」


そう念を押して、クラウドは斬りかかる。


「全てを断ち切る…っ!」


何度も敵を斬りつけ、トドメの太刀が爆発する。


「…っ!」


爆風を腕で庇う間に、バッツが最後のイミテーションを倒しているのが見えた。


「少しは良いとこ見せなきゃな」


にかっと笑いながら彼はこちらに戻ってくる。


「怪我はないか?」


「大丈夫」


剣を背負い直したクラウドに答える。


「いやー、急だったな。びっくりしたぜ」


「………ねぇ、最初にバッツが使った技って?」


銃のようではあったが、コスモス側にあんな武器を使う人はいないし、カオスも同様だ。


「ん?あぁ、多分イミテーションから真似できたんだと思うんだ。

コスモスにもカオスにもあんな技使う奴いないしな」


「珍しいな…、アンタが技に興味を持つなんて」


「あ、いやあんな武器初めて見たから…」



でも、胸に残るは一抹の疑問。



本当に…あの技を、武器を見たのは初めてだっけ?












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