08:不意打ち




女の子は好きだ。

可愛いかったり美しかったりと魅力は様々だが…、何より守ってやりたくなる。

勿論強いレディも魅力的だが、男たるモノ惚れた相手には良いとこを見せたい。



それはさておき。



(あー、やっぱりスコールもだよな)


自室のベッドに横たわって、彼は思う。


(敵…多過ぎだろ)


しかも本人は鈍い…というか何と言うか。


(本気にしてないっつーか、家族?みたいな感じにしか思ってないよな。

恋人とか…、元の世界でも居たりしたのか?)


彼らの記憶は未だに曖昧。
覚えることもあるけど、分からないことも多い。


(そーいやミラベルも記憶が曖昧なのか?)


彼女は少しだけ自分達とは違う。


今はコスモス側にいるだけで、本来はどちらにも属さない。

誰に喚ばれたのかも分からない。

ただ、気がついたら現れて成り行きで仲間になっただけ。


(明日聞いてみっかなー)


そんなことを思った矢先。


「〜〜〜〜〜っ!」


声にならない声をあげてミラベルが部屋に飛び込んで来た。


「ミラベル…っ?!」


いきなり過ぎの展開にその身に駆け寄れば、強く抱き締められた。


「〜〜〜っ!」


ぎゅううう…と強くなる腕に、ジタンは嬉しいような心配なような複雑な心情で彼女の頭を撫でる。


「ミラベル、どうした?」


この住処に敵襲が来たとは考えにくい。


「…が、……に」


「なんだって?」


泣きそうな声に聞き返せば、涙目の瞳と目が合った。


「クモ…が、部屋に…」


「蜘蛛ぉ?」


一瞬雲かと思い、カオス側の超セクシー系お姉さん(?)を連想したがミラベルは何故かそのお姉さん(?)と友情らしきを築いてるのでこの反応はない。


「ミラベル、蜘蛛ダメなのか?」


その問いに、彼女は何度も頷く。


「怖くて…、それで」


近くの部屋に逃げ込んだらしい。


ミラベルと一番部屋が近いのはティナだが、その次ぐらいにジタンも近い。

くじ引きの結果とは言え、女の子と部屋が近いというだけで喜んだものだが、この展開は予想外だった。


「俺が退治するから、な?」


「うん」


珍しく弱気な彼女の手を引いて、ミラベルの部屋に向かった。















「もう来るなよー」


ミラベルの部屋にいたのは特に大きくもないフツーの蜘蛛で、殺すのも可哀想だとダガーに乗せて外に逃がす。


「あー、良かった助かった」


先ほどまで涙目だった彼女は、蜘蛛がいなくなるやいなやケロッとしていた。


「切り替え早っ」


苦笑しながらダガーを仕舞うと、ミラベルはいつの間にか近くにいた。


「ありがとう、ジタン」


「…っ、」


不意打ちな笑顔に、見とれてしまう。


「別に、これぐらい…」



−−−男たるモノ、レディの前ぐらい格好つけたい。



余裕のない自分をらしくないなんて思い直した。



「また、いつでも呼びなよ」


「!」



だから、これは仕返し。



不意打ちに、ミラベルの頬に軽く口付ければ耳まで赤くなる。



「夜中に、男の部屋になんて来ちゃいけないぜ?」


そう言って、彼はニヤリと笑った。













[ 27/63 ]

back





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -