04:水面下で散る火花
「久しぶりだな」
「げ」
久しぶりにウォーリア達の目を盗んでふらふらと暇つぶしに出てきたのに。
長く美しい銀の髪が視界に入った時、私はその場で回れ右をした。
「随分なご挨拶だ」
「離して下さいぃ!」
目にも止まらぬ早業で私は抱えられた。…というか肩に担がれた。
「暴れると見えるぞ」
「なら降ろして下さい」
見えるぞとは勿論、私は短いスカートですので…ね?
それでもウォーリアとフリオニールとクラウドとスコールに言われて多少は長くはしてあるのだが、体勢が体勢だ。
「私に何の用ですか?」
「暇つぶし、だな。もしかしたらアイツが釣れるかもしれないが…」
「そんなことで私を攫うの止めてくれますかね」
「なら、ふらふらと1人で出歩かないことだ」
むー、とされるがままになっているのも悔しいので背中でも叩いてやろうか…、いやでも落とされそうだなぁ…、とか思っていた時。
「また遊んでいるのか…」
「ゴルベーザさん!」
黒い甲冑で表情は分からないが、多分声音的に呆れている。
ちなみにゴルベーザさんは私的常識人ランキング〜カオスの部〜でぶっちぎりのトップだ。
「助けて下さい!」
「1人で出歩いてるとセシル達に叱られるぞ」
「セフィロスに攫われたって言えば大丈夫です」
「なら、望み通り攫ってやろう」
「でもゴルベーザさん助けて」
「………何がしたいんだ」
バタバタと暴れてみても、セフィロスは降ろしてくれそうにない。
「邪魔をしたら斬る」
「…器用に武器を構えるな」
「いや私担いだまま戦うのは止めて下さいよ?」
ゴルベーザさんに長い、本当に長い刀を突きつけるセフィロスは本気なのか分かり難い。
「コスモスの者には言っておく。それまでは我慢しろ」
「ちょっ、ゴルベーザさん?!」
「偶には灸も必要だろう」
「ほう…、偶には良いことを言う」
まさかの裏切りに私は戸惑う。
「助けて下さい〜っ!」
「セシルも“あの子が1人でふらふらするのは気が気じゃない”と言っておったのでな。少しはこれで懲りよ」
「声真似上手ですね…じゃなくて!」
「行くぞ」
「どこに?!」
そのまま私はセフィロスの肩に担がれたまま、腹癒せに遠くなるゴルベーザさんに舌を出した。
−−−ミラベルが完全に見えなくなった時。
「助けてやりゃー良いのに。何だかんだ言ってアンタも遊んでんだろ?」
「ジェクトか…。お主こそ、隠れ見るぐらいなら助けてやったらどうだ?」
近場に隠れていたジェクトが顔を出した。
「いや、あのお嬢ちゃんの反応を見てたくてな。
お前さんだって似たようなモンだろ?」
にかっと屈託のない笑みに、ゴルベーザは応える。
「カオスにもコスモスにも属さぬ、更には戦いとは一切無縁の存在、か。
確かに興味深くはある……が、なにより」
「なにより?」
わざわざ区切る言い方に、先を促す。
「セシルが気に入ってるようだからな」
「………」
その言葉にジェクトは無言のまま頭をかいて…、
「ウチの息子も、なんだよなぁ」
そう言った。
−−−−−2人の視線の間で、火花が散った気がした。
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