01:そんな立ち位置
ひょんなことからこの世界に来て、ひょんなことからコスモス陣営に身を寄せてはいるが…、基本的に私はどちらの敵でも味方でもない。
が。
「…だから、ミラベルは俺達の味方だと言っている」
庇うように私の肩を抱き締めるスコールは、視線を鋭くする。
「………」
されるがままにしているのは、離れようとしても無駄なことを既に理解しているからだ。
「別に、ミラベルはどちらにも属してはいないのでしょう?」
だからって私の意見を全無視で争奪しないで欲しい。
今、スコールの目前にいるのは次元の魔女ことアルティミシア。
−−−彼女の言う通り、私はどちらにも属していないし、カオス側に恨みがあるわけではないが。
「此方にいらっしゃいミラベル、可愛がってあげますよ?」
「全力で拒否します」
妖しげな笑みが怖い。
というかカオス側はだいだいどこか破綻してる人間が多くて怖い。
「−−−走れ、光よ!」
そんな時、光の柱が次元の魔女へと向かって駆けた…っ!
「…っ!」
眩しさから目を閉じれば、聞き慣れた声が耳に届く。
「無事か?」
「ウォーリア!」
目を開けた先には、光の戦士が剣を構えていた。
「………2対1では、流石に不利ですね」
「さっさと消えろ」
ガンブレードの剣先を魔女の方に突きつけて、スコールは言う。
「またの機会にしましょう、ミラベル?」
「2度と来ないでくれると嬉しいんですけど」
薄く笑って消える姿を見届けた後、武器を下ろした2人に詰め寄られる。
「………お前は、何度言ったら俺達の言うことを聞くんだ?」
「うっ」
責めるような低い声に、私は呻く。
「君は敵に狙われているんだぞ?
いくら“あの力”があるとは言え、軽率な行動は慎むべきだ」
「ついでに1人じゃ戻ってこれないことをいい加減自覚しろ」
此処にバッツやジタンが居たら助け舟を出してくれるのだが、生憎今はこの2人しかいない。
「………ゴメンナサイ」
素直に謝れば、スコールはため息を一つついた。
「次からは気をつけろよ」
「では、帰るか」
そう言ったウォーリアの後をついて行きはするが、私には少しだけ不満が残る。
(過保護…)
内心で溜め息をついて、歩を早めた。
ひょんなことからこの世界に来て、ひょんなことからコスモス陣営に身を寄せてはいるが…、基本的に私はどちらの敵でも味方でもない。
−−−とある力を持つが故にカオス側に狙われる、なんてツマラナイ建て前で。
争いに飽きたんだか疲れたんだか知らないが、戦士たちの息抜きに争奪される…それが私のポジションだ。
だから、私の特性は………。
trouble maker
「ただいまー」
「おかえり…って、まーた叱られたのか?」
低めのテンションで聖域に戻れば、バッツが目ざとくそう言った。
「今日はアルティミシアだな」
「あぁ」
私がカオス陣に絡まれるのは日常茶飯事なので、スコールの一言で彼は納得したらしい。
「ミラベルは1人でふらつくなって言われてるだろー?確かに旅をしたくなる気持ちは分かるが、いくら俺でも女の子の1人旅は止めるぞ」
いやバッツは例え女の子でも1人旅しそうなクセに何を…。
「別に旅がしたいんじゃなくて、此処でじっとしてるのが暇なだけだって」
その言葉に、ウォーリアは言う。
「なら、私達に一言かければ良いだろう?
君は戦えないんだから、何かあったらどうする」
(………クリスタル探したりイミテーションと戦ってる邪魔したくないから、声かけないのに)
思っていても言わない。
言ったって“そんなこと気にするな”と言われておしまいだ。
戦えないからこそ、気にしてしまうのに。
それに、一応は自分の身ぐらいは守れる。
言っても分かってもらえないジレンマを感じながらも、決して彼らが嫌いではないので私は素直に答える。
「…次はそうするよ」
自信はないけど。
「ミラベルもいい加減にしないと痛い目見るぞ〜」
「バッツが言うかぁ?」
おどけた声音に対したのは、先ほどまでは居なかった人物の声。
「ジタン!それにセシルも」
ジタンと、その後ろにはパラディンとなったセシルがいる。
「ただいま。…また1人旅かな?」
「おかえり。…また1人旅だよ」
苦笑気味の彼に嫌味のように返すが、さして気にはしないだろう。
「だから俺とデートしようぜって言ってんのに…」
「あ!その場合は俺もだからな!」
呆れたように言うジタンの台詞に、バッツが素早く挙手する。
「なんでだよバッツ!デートだっつってんだろ!」
「お前とミラベルが2人きりでいたらどう考えたって邪魔したくなるだろ!」
「男の嫉妬は見苦しいぜ」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ2人を尻目に、セシルがにこやかに言う。
「総じて見苦しいね」
「同感…」
思わず私は呟いた。
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