小咄


;) 手塚国光




「鼻血っていきなり出るからびっくりするよね」


「だからと言ってわざわざ鼻にティッシュを詰めたまま来る必要はあったのか?」


部活中に副会長である彼女がわざわざ用事で来たいうから、何かと思えば。


「本当に前触れなくポタッ…みたいな。ダメになったのがこれ一枚だけで良かった」


曰わく、生徒会の書類確認中にいきなり鼻血が出て書類に血がついてしまったらしい。再発行自体は問題ないが、生徒会長のサインが必要だったようで…即作り直してテニスコートに来るその仕事の迅速さは見習うものがある。…が。


「…血が止まってから来ても良かったんじゃないか?」


乾が興味深そうにしてるのに、どう対応しろと言うのか。


「いや、ティッシュ切らしちゃったから貰えればと思って。あ、勿論買って返すから」


「別に構わないが…」


部室にあったティッシュ箱を渡せば、軽く鼻をかむ音。流石に他人の、しかも−−−何の躊躇いもなく鼻にティッシュを詰めたまま生徒会室からテニスコートに来るような人物だとしても−−−女子の鼻血シーンを見たがる性癖は無い。

サインをした書類に無意味に視線を固定させておく。


「私って鼻の血管切れやすいらしくってさ。あ、男子って鼻血出にくいってホント?」


「…俺は出したことはないな」


いやその前になんだこの話題。


「うあー、止まらん。ただでさえ貧血気味なのに」


「大丈夫なのか?」


「まぁ、慣れっこだし」


自分に経験が無いから、少し心配になる。


「止まるまでは此処で大人しくしていろ。何なら練習でも見るか?」


「あ、良いねそうしよう。お邪魔じゃない?」


「部員達も特に気にしないだろう」



と、言った数分後。
不二と乾に冷やかされるとは、まさか思ってもいなかった。