小咄


;) Another×Candy #01



お天気お姉さんのうーそーつきー「本日は1日中晴れるでしょう」みたいなこと笑顔で言ってたじゃんか、傘なんか持ってないよ…ていうかさ?


(なんでこのタイミングで降るかなぁ)


氷帝に居る時なら置き傘やら跡部の車やら何も問題はなかったというのに。


(濡れてないよな…)


実は現在、青学にお使いに向かう途中で。何やら書類関係の入った封筒を渡されたのだが、それは微妙にカバンに入らないサイズで。まぁ…来る時は綺麗に晴れてたからフツウに手に持って来たのだけど、この急な雨で。紙の封筒に入ってるものだから、濡れたら困ると抱えて走って…現在は閉店の札のかかったお店の屋根の下。


(跡部…今は練習中だろうしなぁ)


連絡しても、気づかないだろう。

氷帝には室内テニスコートがある。しかしこの酷い雨では、青学は練習中止だろうか。せっかくここまで来たのに書類を渡せない、しかも無駄に濡れただけなんて悲し過ぎる。


「くしゅっ!」


さっきまでは暑いとすら感じるほどだったのに、雨で下がった気温と濡れたせいで結構寒い。

せめてブレザーを着ていたならもう少しマシだったろうが…、つい先週の衣替え完了期間が憎い。


(取り敢えず跡部に…)


冷たい手でケータイを取り出した…その時。


「大丈夫か?」


「?」


聞き覚えのある声に顔を向ければ、手塚が居た。…しかも、ご丁寧に未使用らしきタオルを持って。


「…なんで…くしゅっ!」


ここに?と聞こうとしたら、頭にタオルをかけられた。


「跡部から連絡があってな。…すまない、濡れてからでは遅かったな」


「あ、いや大丈夫。…でもあったかい飲み物とかない?寒い」


わしゃわしゃと自分の髪を乾かしていると、「飲み物はないが…」という言葉のあとに、肩に何かかけられた。


「少しはマシだと思うが…」


「いや、手塚が寒くない?」


それは彼の着ていた長袖のジャージで。


「俺は大丈夫だ。…取り敢えず、青学に行こう。何か温かい物も用意させる」


結構本気で寒いので、有り難く厚意を受け取ってジャージに袖を通す。当たり前だがデカい。袖から手が出ないぜチクショー。


「あぁ、それと…傘がこれしかなくてな」


「私と相合い傘は身長差的にツラいよ?」


あ、自分で言ってて悲しくなってきた。いやいや手塚の背が高いのが悪いよ、跡部は確か175とか言ってたけど(10cm寄越せ)それより高い…180?ぐらいあるのかもしれない。10cm寄越せ。


「………」


ふむ、と少し考える動作をしたかと思うとひょいと体が宙に浮いた。


「すまないが、少し我慢してくれ」


「…うん」


いや、この体勢には慣れてるけど………まさか、手塚にされる日が来ようとは思っていなかった。



要するに、抱っこされたまま青学に保護されました。