小咄


;) 跡部と情報屋



日々激化する犯罪を無くすため組織された特殊治安維持部隊・氷帝の若きエリート司令官跡部と裏社会の全てを知る謎の女情報屋が悪の組織立海と戦ったり戦わなかったりするかもしれないお話。


【特殊治安維持部隊・氷帝】
最新にして高性能な武装を許可された政府の切り札。実力主義で幹部は難関なテストをクリアした各方面のエリート集団。過激ともとれる手段で悪を根絶やしにする。

・跡部
エリート街道まっしぐら何様俺様司令官。的確な状況判断と慎重かつ大胆な戦略で数々の極悪犯罪者を捕まえている。

・滝
主に情報収集を担う氷帝の良心。以前は前線で戦っていたが宍戸が鳳と組んで実戦部隊になってからはサポート役に。


・主人公
手に入れられない情報はないと噂の情報屋。実は殺人と人身売買以外の犯罪はだいたい犯してる…らしい。戦闘能力は護身と逃走に特化している。



……………





滝に言われた通りの場所に行けば、そこにいたのは脅迫されている女だった。


「情報屋について何か知ってんだろ?大人しく話すなら…」


「おねーさん、このグラタンパン1つ。飲み物はアイスティーをストレートで」


オープンカフェで女1人にナイフで脅迫する男も男だが、まったく臆することなく注文を述べる女も普通の神経ではない。
ウェイトレスが焦ったような困ったような表情になるのも納得だ。


「あんまナメてっと公開処刑にすっぞ?」


「えー、確かに殺人と人身売買以外の悪いことはだいたいやったけど処刑されるほどじゃないよ」


「この…っ!」


キレやすいのか知らないが、男はナイフを振り上げる。


「やめとけ」


流石に殺しはしないだろうが、目の前の傷害事件…まだ未遂だが…を見逃すわけにはいかない。


「!」


男の後頭部には、S&WのM460の銃口。犯罪が激化しているとはいえ、真っ昼間の往来で容赦なく銃を取り出せる人間は二種類に分けられる。政府の…それもかなりの実力のある人間か、捕まえるべき極悪人。
状況的にも男は俺のことを前者だと判断するぐらいの脳はあったらしい。そのまま大人しく固まる。


「俺だ。大した奴じゃねーが放ってもおけねーからな」


すぐに本部に連絡すれば、偶然近くを巡回していた日吉と岳人にそいつを連れて行かせた。


「あっ、これ追加で」


そして、それらが終わった時には女はグラタンパンを食べ終えてデザートを注文していた。


「良い度胸だな」


その向かいの席に座るとしれっと女は答えた。


「まぁー、君が氷帝の人間だってのはすぐ分かったから大丈夫だと思って」


時間と場所はともかく、誰が来るかそれがどんな人物なのかは伝えていないし警察のように分かり易く制服を着ているわけでもない。
なぜ分かったのか…という問いは発する前に答えられた。


「だって情報屋だし。初めまして跡部サン」


「滝のいう情報屋はお前か。色々訊きたいことはあるが…先に良いか?」


アイスティーを飲みながら視線で続きを促される。


「さっき言ってた“殺人と人身売買以外の悪いこと”について詳しく話してもらおうか」


「………あは」


ナイフで脅迫されるより焦ったらしき様子を浮かべるってのはどういうことだ。