小咄


;) 社会人手塚




「−−−……、?」


「にゃあ」


違和感を感じてゆっくりと目を開けると、猫と目が合った。


(どこだ…?)


ホテルまで辿り着いた記憶はないのに、ベッドの上に居る。…取り敢えず猫を下ろして起きると、やけに整ったまったく見知らぬ部屋。


「………」


カーテンを開ければ、思ったより現在地は地上から離れていたらしい。見下ろした車がかなり小さく見える。


「にゃーん」


「…人懐っこいのな、お前」


先ほど下ろした猫は、足元にすり寄ってくる。抱き上げてやろうかと思ったら、少し遠くで扉の開く音。


「!」


家主だろうか。歩く音が近づいてくる。…緊張感を持つ私のことなど気にもしないで、猫は扉へと駆け寄ったが。


−−−ガチャ


「だから扉のすぐ前に立つな」


少しだけ困ったような声音で言ったの主は、飼い猫を抱き上げるとすぐにこちらに視線を向けた。


「起きていたのか」


「………」


格好を見る限り、仕事から帰って来た社会人だろう。警戒を隠しもしないで突っ立っていれば、気にした様子もなく話し掛けられた。


「不調はないか?」


「………アンタは」


多分、助けてくれたであろう人物に対して失礼だという自覚はある。が、こんな世の中だ。善人だけじゃない。

なんて思っていたら。


………ぐぅ


「………」


「………」


空気読めよ私の腹。空腹なのは事実だけども。


「………取り敢えず何か食べながら事情を話さないか?」


無言で私は頷いた。