積層 2
今朝とは打って変わり、窓の外は灰色の空で埋め尽くされていた。
よく見ると、雨が降りだしている。
『何か用か』
サソリの冷たい視線が、雨を背景にデイダラへと向けられた。
殺風景だが書物や薬品がびっしりと並んでいるその室内に目を見張りながら、デイダラは口を開く。
「うん。オイラわかったんだ……つまり二人一組とは、"合作"そのもの!二人で一つの作品を作りあげる…!これこそがオイラ達の真の関係性なのだあぁ!!」
濡れた髪を背中で纏めた少年は両腕を拡げて盛大に発表した。
サソリは言葉を失う。
そして更に、二の句を出せない事に絶句した。
「アンタ、一部分カラクリなんだろ!?体中スッゲー仕込みだったもんな、おんなじ物創り同士だ、うん!」
『──…』
「オイラを殺ったのも毒針だろ?ヘヘッ、全部お見通しだぜ!ま、オッサンが解毒まで出来るとは流石だけどな……一体どこまで傀儡にしてんだい?うん?」
不覚にも呆気に取られたサソリは、我に帰ると怒りのままにその尾を振りかざした。
「──っと、ソレもカラクリだな!どこから生えてんだ?」
『てめぇ──…』
一体何なんだ、
昨日とはまるで正反対の様子にサソリは困惑と苛立ちを募らせる。
何が"合作"だ。考えた結果がソレなのか?芸術云々の前にコイツはやはりただの馬鹿だ。
だが、好奇心を剥き出しにした今のデイダラの勢いは止まる気配すら無い。
ウザいにも程がある
「なぁって!アンタすげーな、この尻尾も本物みてーだ、うん」
『………』
興味の指し処が次々と変わってはいつの間にかデイダラは、サソリの傑作品であるヒルコの完成度を賞賛していた。
くるくるとその回りを回っては爛々と目を輝かせ、真剣な顔つきで一方的な質問を繰り返す。
その全てを無視するサソリに構う事なく、デイダラはニカッと歯を見せ笑う。
「オイラ達、芸術コンビだな、うん!」
何の混じり気もない、純粋な子供の笑顔。
嬉しそうで、それがどうにも眩しくて。
サソリは腹の底の蠢きに眉間を寄せる。
それはどうしようもない程にどす黒く渦巻き、耐えかねたサソリは頭上の尾で威嚇した。
『言った筈だ……てめぇは相方失格なんだよ。俺に構うな』
「でも二人一組はリーダー命令だろ?」
『………ふん、ただコンビってだけだ。弱けれりゃどっちにしろお前は死ぬ。せいぜい俺に殺されねぇようにするんだな…』
サソリはそこまで話すと次の任務の日時だけを言い捨て、デイダラを突き飛ばすように部屋から追い出した。
暫く外で叫んでいた子供の足音が遠ざかっていくのを聞きつつ、サソリは静かに口を歪める。
次の任務は多数国の追い忍共の一斉駆除。的確な判断能力が必須な、頭を使う任務だ。
あの子供に遂行できるとは思えない。
(まぁいい、使えなきゃ殺すまでだ)
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2014.6.11