刄が空を斬る。鉄同士の交じり合いが断続的に木霊する。間髪入れずに襲い来る猛刃に飛段は反射だけで応戦している。




(―っ!!息つく暇もありゃしねぇ!)


一体この女は何者なのか。これだけの俊敏な動きと軽やかな身のこなし―そして先程からの図り知れぬパワーに流石の飛段も気圧されていた。

(こりゃ、普通のくの一じゃねぇな…厄介な奴に当たっちまったぜェ!)


だが、どんな強靭な忍とて必ず弱点は存在する。

と、よく相方が言っていた気がする。


飛段は無い頭をフル回転させ相手の行動パターンを分析し始めた。




「………………………………、、、やっぱわかんねぇよ!!!俺無理!!」



やはり残念な頭部であった。



(こうなりゃとことん押すまでだ!!一滴でも採れりゃこっちのもんだからな…!!)


ドォォン…!!!


刹那、隣で小規模な爆発が起こり、一気に爆煙が流れ込んできた。

(あっちも始まったか…!)合図を確認し、飛段は作戦通りに印を結んだ。





しかし、視界が晴れきる前にスゥっと椿が現れ再び刄合戦が始まった。
―こりゃ一筋縄じゃいかなそうだ


思ったよりも手強い相手に しかも体力では自信のある己が女に押されている事実に舌打ちをして、飛段はもう一度大釜を握り直した。










「アンタの武器はその爆弾かい?ウッフフフ、キレイな花火じゃないか。」


戦闘開始の合図の爆煙に紛れ デイダラは印を結び再び鳥に飛び乗る。


すかさず何かが飛んできた。
鞭だ。飛段の言っていたのはこれか。


見るからに痛々しい棘だらけの其れは、蕾の振るう腕により大きく撓(しな)り唸りを上げて這い上がってくる。


まるで生ある者の如く柔軟に蠢く様が、さながら蛇のような邪悪さを纏っているように見えた。


(鬼に金棒ってやつだな…うん!)


鬼だけでも手こずりそうなのだ。先にあの厄介な鞭を何とかしたい。あれに叩き付けられたら絶対に激痛だ。飛段じゃあるまいし自分にはその気(け)は無いので遠慮したい。


「飛んで逃げるだけじゃあアタシは倒せないよ!」


地上で蕾がほくそ笑む。


「オイラは遠距離タイプだ!お前なんか一瞬で芸術にしてやるよ、うん!!」


そう叫びデイダラは更に上空へと鳥を羽ばたかせた刹那―


「あんまりアタシを甘く見るんじゃないよ」

目の前で声がした。

地面に豪快に鞭を打ち付けた反動で飛び上がり、デイダラの視界に入りにやりと口元を歪ませる。


「なっ――!!!」


予想外の展開に思考が一時停止したが、寸でのところで蕾の鞭を避けた。


「っぶねぇ…!!」

デイダラは一旦更に高度を上げ、鞭での跳躍でも届かぬ位置で分析を始めた。


(このまま移動式起爆粘土で追い詰めるか―)

相手が追ってこれない以上、攻撃の分はこっちにある。確実に狙いを定めて直発させるのがベストだろう。


上から仕掛けるなら鳥型がいいが、念の為昆虫タイプを鳥型に付着させておこう。


後はタイミングを見て陽動で―
「これだけ高いとやっぱり見晴らしがいいねぇ。」





―何故だ








振り返る間も無く背後から羽交い締めにされた。


いつの間に自分の後ろに立っていたのだ…下を見ると既に蕾の姿は無く、代わりに聳える木々から無数の蔓が足元まで伸びていた。


「ウッフフフ…アタシは自在に植物を操れるんだ…草木のある場所なら何処へでも移動できるのさ」


そう言って蕾はデイダラの首元に顔を埋め、フゥと耳に息を吹き掛けた。


「――!!やめろ!」


無理矢理身体を引き剥がそうとした瞬間、大きくデイダラが痙攣した。


「―ぐ、がぁああ…!!」


ビリビリと麻酔のような電撃を体内に流し込まれ、鳥ごと急降下した。


「ウッフフフ、ちゃんと操縦しないと落ちちまうよ坊や」


地面間近で落下は阻止したが、微電流は流されたままだ。


「く、…やめ、ろ!!離せっ、うん!」

額に汗を滲ませ必死で逃れる方法を模索する。

未だデイダラを背後から羽交い締めにしている蕾は妖しげに微笑み、暁の外套の前を開きゆっくりと中に手を入れた。


「おい、何しやがる!!やめろ、気色悪ぃ…!!」


何だかとてつもない不快感に襲われデイダラは声を張り上げた。それは恐怖にも似ていた。


「アンタも年頃の男の子だろ?ウッフフフ…こういうのには興味あるんじゃないのかい?」


そう言って蕾は豊満な乳房をデイダラに押し付けながら、外套の中の忍装を捲り上げ厭らしく腹を撫で回す。
逃げようにも何故だか体内からの痺れに侵され上手くチャクラが練れない。


「どうだい、そろそろ痺れが気持ちよく感じてきた頃だろ?ウッフフフ…アンタの体内にちょいと植林させてもらったからね。」


―なんだと。通りで内側からの電流が止まない訳か。


「雷草というアタシの体内で生育させた埋め込み式電流植物さ」


痛みに耐えながらデイダラは蕾の弱点を探す。


「アンタが雷に弱いってのは知ってたからねぇ。気づいたかい?アタシの名前は雷に草と書くんだ。ウッフフフ…永良様が付けて下さったぴったりな名前さ」


そう囁いた蕾はベロリとデイダラの頬を舐めた。


―こりゃちんたらしてるとチャクラが消耗しちまうな、うん…


あらゆる刺激と戦いながら、何とかデイダラは腰のポーチへと手を入れた。












「どうやらあちらも始まったようだな。」


何処か愉しげに永良は呟いた。


二人も遠巻きから戦闘の様子を窺ってはいるものの、いまいち劣勢な状況に不安感を隠しきれないでいる。


「角都よ、お前があの男の情報に流されてくれたおかげで全員纏めて始末ができる。お前達暁の主要メンバーに関してはあらかたの情報は得ているからな…故に、此方もそれなりに人選をさせて貰った。」


嫌な予感が現実化していく。
やはりあの情報屋は罠だったか。

「まずお前の相方の銀髪、あやつは標的の血液で自身に置き換える能力を持っている…そうだな?」


角都は黙って永良を見据える。


「あの大釜と強力なスタミナで豪快に攻撃を仕掛ける戦法のようだ。だから此方の手札は椿を充てた…彼女は忍ではない。元、殺し屋だ。体力勝負で彼女に勝る忍は、恐らくいないだろう。」



隣では凄まじい金属音が鳴り響いていた。


殺し屋vs死神…
成る程、聞いただけで絵ずらがおぞましい。



「そしてお前の相方の金髪の少年…あやつは自在に動く爆発物を自らの掌で作り出し空をも飛ぶ。しかしながら雷遁が弱点のようだな。あやつの相手は蕾だ…彼女は雷遁使いでは無いが、特殊能力で微量の電流を操ることができる。」


先程から何度か爆発音がするがどうやら既に電流を喰らっているようだ。





暫し その場は沈黙に包まれた。




きっとサソリの前にいる楓というこの少女も 恐らく自分に充てられた存在なのだろう。


甘く見ていた。偽暁を語る敵が雑魚過ぎた為に侮っていたが、やはり近衛三人衆は例外だった。

「実はな、彼女らは俺が選び抜いた犯罪者達だ。」


サソリと角都が同時に永良を睨む。


「つまり、お前達と同じということだ。」




今までの雑魚共とは訳が違うということか。




―これは 不本意ながら、本気で行くしかなさそうだ。




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2012.07.13
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