決定的な言葉は無い。

何かに流されてるでも無い。


ただ何となく、感じてた。わかっていた…始めから?
いや……



   虫の報せ




アンタが いなくなること




怖くて、怖くて

オイラはただ耳を塞いだ。


紅い月を 黒雲がゆっくりと霞めていく。


じりじりと、離別(おわり)の刻が忍び寄る。



何度涙を流しても

強靭な運命に逆らっても、叫んでも 心を偽り殺しても

オイラに見えてる結末は静かに近付いてくる。





オイラの前から消えちまうのか?

"永遠"だって…言ったじゃねぇか…!

嘘ならいっそつき通せ、置き去りにするならこんなにも愛さないでくれ…





もっと名前を呼んでくれ

もっと髪を撫でてくれ

『生まれ変わっても永遠に一緒だ』と
また口癖のように言ってくれ


オイラを一人にしないでくれ

約束しただろ…?

約束、しただろ……?



もっと 同じ時間(トキ)を生きたいよ…!


旦那… アンタが好きだ。
壊れる程に




崩れかけた砂の城を、オイラはまだ支えている。

手を離したら…
アンタは消えちまうんだ。





その言葉だけを信じ、長い刻を耐え抜いてきた。
オイラの誇りなんだ…
誰にも出来ない事だ。

アンタへの愛は
偽り無き慈愛の力に満ち溢れていた。

信じてきた人生に、一寸の悔いも無い。

ただ幸せだけを、人並みに掴みたかった。






アンタの優しすぎる笑顔が、オイラの心をぐちゃぐちゃにした。


もう、張り裂け過ぎて血が出そうなんだ。





幸せだったね








置き去りにしたのは…オイラの方か?



自由を求めた オイラの方か?


そんなオイラを…アンタはもう、愛してくれないんだな…





それでもずっと、ずっと




声が届かなくても



アンタに触れられなくても


この魂がある限り







オイラはあの 確かに輝いていた幸せな夢の日々を





いつまでも、いつまでも見続けるから───












fin.
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