吹き抜けた高空に 青臭い湿気がまとわりつく。
この頃力を発揮し出した太陽に、オイラは目をしかめ掌を翳した。
何処からともなく沸く虫の声。
茂みを掻き分けるうちに、じんわりと汗が滲んだ。
「まだか…うん?」
目的地は近い筈だ。
『そろそろだ……ちゃんと予定通りやれよ』
雑草を踏み倒す音に紛れて、奴の睨む音が聞こえてきた。
「いちいちうるせぇな、わかってる」
じっとりとまとわりつく奴の視線が離れた後に、ふん と空気が漏れた気がした。
全く、鬱陶しいったらありゃしねぇ。
オイラはぐいっとその胸糞悪い湿気ごと拭った。
また 太陽の光が行く手を照らし付ける。
先に獲物を仕留めるのは オイラだ。
掌の咀嚼物を見下ろしてオイラはこの先の美を想賛する。
慎重に築き上げた物事を、一瞬で壊した時の興奮と来たら。
オイラはニヤリと口端を上げ、その不変的な堅い背中を睨んだ。
fin.