びゅう ──… と風が吹き抜けた。
あまりの冷たさに目を閉じる。金色の髪がしゅるると巻き上がると、遥か上空の彼方に吸い込まれていくような気がした。
耳がキンとする。
少しでも体温を逃がすまいと前はしっかり閉じてはいるが、晒されたつま先からは刺すような冷気が浸透してくる。
先端を彩る濃紺が 一層血色を悪く思わせた。
忍装服とはいえ流石にここじゃ季節外れ、いや 常識はずれだろう、これは。
「旦那、オイラに待機は向いてねぇ」
『知るか。俺に文句言うんじゃねぇ』
相変わらずの相方は、いつも通り棘を吐き慎重に機を窺う。
まったく、やってらんねぇ……
その慎重さを吹き飛ばす威力のくしゃみをしてド突かれた。
(これはしょうがねぇだろ、うん……)
盛大に鼻水を啜り、手のひらを擦り合わせる。はぁ、と息を吹き掛けると指先がじんじんした。
早く出番来ないかなぁ
『…ったく、』
どこからかそう聞こえた瞬間───
(──!?)
唐突に腕を引かれ目の前が真っ暗になる。
忍として不覚───
目が馴染むとそこは、あの甲羅の中のようだった。
『これならちっとはマシだろ』
すぐ真横で若い男の声がした。
息がかかる程近い。
あり得ないくらいに 心臓が跳ねた。
「ちょっ…!え…!?何して──『出たきゃ好きにすればいいが……』
暗闇でも 赤い目が光るのがわかった。
『風邪ひいたら殺すぞ』
それから数時間。特に暖が取れる訳でもないのに抜け出る口実も見当たらない。
ようやく来た出番も何故か思うように集中できず、結局説教される始末。
……どう考えても、あんたのせいだろ