どれくらい歩いただろうか。日は既に高く昇り、燦々と光を振り撒いている。まだ夏の名残を残すこの季節に、こんな出で立ちで歩き続けるのは流石にキツイ。
「暑いな…、うん。」
一人呟きながら笠を被る。幾分暑さがマシになったような気がする。
前を行くサソリが急に方向を変えて左脇の叢(くさむら)にガサガサと入って行く。
なんだ…?
デイダラはとりあえず後に続く。どうせ聞いたって何も答えやしないしな。
それにしても、この叢の中は随分と涼しい。太陽の熱を程よく遮断してくれている為、デイダラは先程からの目眩から少し解放された。
前を進む相方を見た。
決して速いとは言えないが、その歩調は驚く程一定だ。どんな場所だろうが場面だろうが、彼の速度が乱れることはない。
ま、疲れ知らずだからな。
そんなことをぼんやりと考えていたら、何処からか水の流れる音が聞こえてきた。川…?
尚も二人は進み続ける。
すると目の前に茂みに挟まれた小川が姿を表した。
木漏れ日から受ける光で水面がきらきらと反射している。流れは穏やかだ。
デイダラは暫くその景色に吸い寄せられていた。
ふと隣を見ると、サソリは木の根元に移動し何やらごそごそと作業をし出した。巻物を取り出し、目を細めて遠くの山々を眺めている。きっと位置確認をしているのだろう。
それにしてもわざわざこんな叢の中に入って確認することは無いだろうに。
…あぁ、そういうことか。
デイダラは少し口元を緩めると、小川の方へ向かった。
十二時間ぶりの休息だった。