暗い空が白み始める。東の山々の頂上一帯の明度が上がる。
空気もシャンと冷たいものに変わった― 夜明けだ。
二人は現在次の目的地へ移動している。
サソリはデイダラが束の間の休息を取っている間にリーダーへの報告を済ませた。
少々厄介なことになった。
そんなことを知らぬデイダラは
「なぁ、オイラ達は何処へ向かってんだ?」
と当然な質問を相方に投げ掛ける。
『…。』
聞いているのかいないのか、サソリは前を向いたままズルズルと巨体を引きずり続けている。
昨晩の暗号を解読したあたりから様子がおかしい。巻物の内容が原因なのは明らかだが、それがサソリの口から語られることは無かった。
デイダラは腹の底で黒く蠢く鈍痛を感じた。自分達はコンビではないのか?言えない理由くらい教えて欲しいものだ。
それに、そんな重要な情報を持ち帰った自分に対して何の言葉もない。理不尽だ、と心叫してみるがサソリにそれを求める事自体が間違っているのだ。
「サソリの旦那ァ!!いい加減ちゃんと説明しろよ、うん。」
無駄と分かっていながら回答をせがんでみる。
『…チィ、煩ぇな…ガタガタ言わず黙って歩け。』
やっぱり。
これ以上刺激しても面倒な事になるだけなので、デイダラはため息をついて空を見上げた。
今まさに、暁だ。
「ペイン…こんな所で何をしている。」
いつもの特等席と言える場所ではなく、薄暗い部屋の中で佇む男に小南は声を掛けた。
「あぁ…。サソリとデイダラに宛てた任務が気になってな。」
声のした方へ振り向きながらもペインのその表情は優れない。
「例の偽暁抹消の件か…」
小南はゆったりと近づき、部屋の重い空気と呼吸を合わせる。
「その任務先で意外な情報が入った。次第によっては事態が急変する。」
ペインは先刻サソリから受けた報告を反芻しながら口を開く。
「それは一体どういうことだ?」
ただならぬ緊張感に時間が止まったような感覚に陥った。
「今回の偽暁を企てた男がいる。永良という滝の抜け忍だ。そいつは現在、角都達が追っている償金首でもある。」
「…。」
その男の真の目的は―
視線がぶつかる
「暁抹殺だ。」
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