今、二人は先刻サソリが戦った方のアジトの前に立っている。


先程の小岩の場所から、北へ500m程行った崖下にそれはある。

相変わらずザァァと水がぶつかる音がするが、さっきよりも随分近い。



忍でない限り、この場所へ辿り着くことは不可能だろう。



デイダラは崖全体を見回した。結界は破られているものの、激しい戦闘の形跡は無い。
中に入ってみたが、暗がりに人が二人倒れているだけでやはり苦戦したような様子は見られなかった。


流石赤砂のサソリというところだろう。


今度は暗号解読の手掛かりを探すべく、空間内を慎重に見回す。



入口付近は外の光でごつごつとした岩肌が確認できるが、奥へ行く程深い闇が広がっている。デイダラは部屋の真ん中で倒れている二人に近づいた。


「…なぁ、こいつら死んでるのか?」



見下ろす様に立ち止まり、視線だけでサソリを見る。 薄暗い空間では相手の表情までは読めない。
湿った洞窟内にデイダラの声だけが響く。



『…てめぇは俺が目標を生かして帰るとでも思ってんのか』

まぁ 確かにそうだ。


余計な質問をした、とまた足元の死体に目を向けた。
見馴れた黒い生地に赤い紋様の入った装束の二人は静かに事切れている。
いつも綺麗すぎて本当に死んでるのか疑いたくなる。サソリの手に掛かった獲物は、殆ど外傷らしい外傷は無く 生きていた頃のそれと同じ状態で倒れている。



デイダラにとってはそれがひどく滑稽に見えた。

死して尚 形を留めているなど不様で哀れだ。


世の全ては散り際が最も美しい。それを鑑賞しないどころか、その器に改良を施し自らの武器として永遠にこの世に縛り付けておくなど、理解の範疇を越えている。



きっとこの相方とは、一生をかけても相容れない関係なのだろうと思う。


それでも共に行動しているのは、ただ二人一組の相方ということだけではなく、同じ芸術家として少なからず尊敬に価する存在と認めているからなんだろう。




視界の端でサソリが動き出した。デイダラは床に転がる毒殺死体から顔を上げその動きを追う。



何ともおぞましい表情の屍といつものつまらない思考はすぐに消え、サソリの見つけたであろう手掛かりに吸い寄せられる。


洞窟内の一番黒い部分へ歩を進める。目を凝らしても何処まで続いているのか判別できない程暗い。

しかしすぐにサソリは立ち止まった。どうやら岩壁はここで終わりのようだ。



奥へ続いている訳ではない為、壁沿いに右方へ進もうとしても相方はただそこにじっとしている。


不思議に思ったデイダラだったが、ふと自分達の足元から僅かな空気の動きを感じた。



サソリの視線に合わせるように屈んだ瞬間、バサッと布を捲り上げた音がしたと思ったら微かな光が灯った。



デイダラの膝から腰にかけてぽっかりと四角い穴が開いている。その奥から弱々しい光が漏れている。


どうやら向こう側へ抜けれるらしい。


当然、ここは自分が行くべきだろうと相方を見遣ると殺気で返された。


「行きゃいいんだろうが…うん。」


デイダラは渋々小さな抜け道を這う。まぁ、見張り役も必要だろうからな。






潜り抜けた先は 畳二畳分ほどの狭すぎる洞穴だった。 半球状のその空間には、質素な机に頼りないカンテラのような灯りがゆらゆらと揺れており、後は古びた本が数冊積まれているだけだった。




他に目ぼしいものはない。デイダラは薄汚れた一番上の本をパラパラと開いた。



何だか訳の判らない文字やら式やらがびっちりと埋められたそれを見て、デイダラはため息をつき全て抱えてその部屋を後にした。


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