独走 2




 絶壁の危険地帯の為か、国境警備兵の始末は二人のみに留まり、黒装束の一体と一人は着々と敵の集落へと進んでいる。

まさしく雲の中にいるような視界の悪さだ。

デイダラは唯一見える前方でズルズルと進む男の背中を眺めながら歩く。

今朝から思っていたのだが、やはりこの男の身体の構造が気になる。
機嫌が悪い時に出現する尻尾のようなものは、ついさっきいとも容易く二人の命を葬った。

そして今は、影も形も無い。
あれだけの長さの物をどうやって綺麗に収めているのだろうか。
それにこの体勢。
常に這いつくばって歩いてるが辛くないのか?コイツのポリシーか?

どんな忍術を使うのか、どれ程の脅威を持つ忍なのか、未知数すぎて逆に興味が湧いてくる。
S級犯罪者と呼ばれるくらいだから、まぁそこそこの実力の持ち主なのだろう。




『おい、そろそろだ…さっきも言ったが早々な危険要素が無けりゃ殺しは無しだ。お前は此処で待ってろ』

「じゃあ危険だったら殺ってもいいのか?」

『俺の話を聞いてたのか…勝手なマネはするな』


そう短く吐き捨てサソリは濃霧に姿を消した。



「…ふん」

その背中が見えなくなるとデイダラはニヤリと口端を上げる。

誰がアンタになんか従うかよ。

今までだって好き勝手やってきたんだ。
現にここのリーダーはオイラの能力を必要としてるじゃねぇか。
オイラはオイラのやり方で行かせてもらうぜ。


 邪魔な奴等は、まとめて吹き飛ばすまでだ。












 薄霧に紛れて里内を進む。

やはり里というよりは小さな集落の合地帯のようだ。
雷の国には隠れ里とは違う個々の集落がいくつも点在しており、その実態は未だ雲に隠れたまま謎が多い。
噂によれば、国自体もその実権者達の把握が出来ておらず、有力な情報を糧に不穏な取引があるとか無いとか。

要はゆすりである。

(その今回の餌が、俺達って訳か)


雑な討議が飛び交う扉の前で、サソリは静かに様子を窺う。

どうやら予想は的中、敵の長らしき脂の乗った声が、「暁」「始末」「報酬」等と低レベルな単語を吐き散らしている。
それに賛同する「オオォ!」という怒声も十人いるかいないかの迫力だった。



(…とんだ無駄骨だったな)


サソリは小さくため息をついた。

これなら百年かかろうとも俺達の敵にはならないだろう。
忍ですら無い奴等相手に最早殺す気も失せた。


だが相変わらず罵声を飛ばし続ける男が勘に触るので、コイツだけでも始末しようかと考えたが…やはりやめた。


今は目立つ行動は極力避けねばならない。
それが現在の、俺達(暁)の役目だ。



一際熱気の漏れ出る建家を背に、サソリが踵を返した次の瞬間──






  ドオォン…!!



耳を覆うような爆音と爆風がサソリの目の前で繰り広がった。







      






2013.12.9
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