いつか貴方を私のものに
10年前、まだ私がほんの6歳の頃だった。
俄にも信じ難いことだろうが、まるで神隠しの如く親族が立て続けに行方不明になっていた。
真偽の程は定かではないが、町の人々の話を小耳に挟めばこんな会話が聞こえた。
「〇〇さんの所のお宅あるじゃない?あそこのご親族の方々、数年前、行方不明になったと思ったらここ最近謎の死を遂げていたことがわかったそうよ。」
「嫌だ、怖いわぁ〜。物騒な世の中になったものね。私も気をつけなくちゃ…」
近所に住む年配の女性が二人、口々にそんな話をしていた。
だが、今のところ見てる限りでは不幸なことが起きてるのは我が家だけだ。
不思議にも、この町の周辺の人々には何の災いもない。
私は子供ながらに、それが奇妙な出来事だと理解し恐怖を感じていた。
もしかしたら、次に狙われるのは私かもしれない。
そう思っていた。
そして、その嫌な予感は見事に的中。
その数日後、雨の日の午後、小学校からの帰りのことだった。
私は傘を差して一人で下校していた。
立て続けに不幸なことに見舞われて気持ちが晴れないため、友達と下校する気にもなれなかった。
恐怖も相まって注意力が散漫になっており、常に何かに怯えながら過ごしていた。
そんな帰り道のことだった。
向かいから黒塗りの軽自動車が走ってくるのが見えた。
その車は私の横に停車。
運転席のドアが開いて、中から黒い帽子、黒いサングラス、マスクをした如何にも怪しげな全身黒ずくめの男が姿を現した。
続いて後部座席のドアが開き、同じ格好をした男が現れた。
私はそれを見て、恐怖以前に何が何だかわからず固まってしまった。
すると、運転席から出てきた男が言った。
「お嬢ちゃん、今時間あるかな?おじさん達と来て欲しい所があるんだが…」
この状況が、良くない状況だということを理解するのに少し時間がかかった。
やっと狙われてるということを理解した私は、ランドセルに付いてる防犯ブザーを手に取った。
学校で支給された防犯ブザー。
何かあったら、これを鳴らして周りに助けを求めなさいと先生や親から教えてもらった。
使うなら今しかない。
そう思った私は、恐怖で震える指先でブザーのボタンを押そうとした。
だが…
「おっと、騒いだらお嬢ちゃんの頭に穴が空いちゃうよ。」
そう言って頭部に突きつけられたのは拳銃の銃口。
私は足がすくみ、悲鳴すらも上げられなくなってしまった。
「さぁ、一緒に来てもらおう。」
そう言って運転席から出てきた男は、私を抱え上げる。
差してた傘は濡れるアスファルトに落ちた。
ようやく声が出ると悟った私は、腹の底から悲鳴を上げた。
「きゃああああーーー!!助けてええええーーー!!」
悲鳴を上げながら足をばたつかせるものの、男は私が暴れようとそんなこと物ともせずに車内に放り込んでしまった。
行方不明になった従兄弟の叔父さんや叔母さん達も、きっとこうして誘拐されて殺されてしまったんだ。
そう思ったら強い恐怖と悲しみを感じた。
私が暴れて車内から出る前に、男二人はすかさず車内に乗り込んだ。
そして運転席に座った男は鍵を差し込みエンジンをかけると発進しようとアクセルを踏み込もうとした。
その時だった。
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