人の身体というものは結構繊細で、その身に起こることに絶対なんてことはない。分かっていた…つもりだった。


「……せ、いり?」

ソファに押し倒された状態、天井を背景にしたまま覚えたての言語を話す外国人のように片言に呟いたエースくんの言葉に私はゆるゆると頷く。ポカンとした顔を見せた後、憑き物が落ちたかのように彼の瞳に冷静の色が戻ってくるのを見てられなくて思わず目を伏せた。

耐え難きいたたまれなさを感じる傍ら、似たようなシチュエーションで同じ台詞を言ったことが一度あったな、と私の頭の中ではビデオが回されるかのように過去の記憶が蘇る。
その時の相手の反応といったら、もう本当に最低のテンプレートのようなものだったけれど。


*****


「……は、生理?」

ベッドの上、ナニとは言わないがさあ今から始めましょうという時。こんな状況下で自ら生理になっただなんて台詞を告げる相手はもちろん限られている。非常に認めたくは無いが私の場合、あの忌まわしい五年前のゴミクズ男しかいない訳で。
きっかり三秒の沈黙を置いて、呆けたような顔で呟かれた言葉。それに申し訳ない気持ちになりながらぎこちなく私は首を縦に振った。

その日は元々予定日では無かったけれど。でも人の身体に起こることに絶対なんてことはあるはずも無く、予定より早くやって来たそれは彼が私の家に来る日に重なった。
呆けた顔のまま今度は五秒。沈黙を貫いた彼は私に覆いかぶさっていた身体を起こすと、放っていた上着を羽織った。

「帰る」
「……えっ?」
「萎えた。お前生理なら前もって言えよ、マジありえねー」

途端に温度を失くした声音と表情。ベッドから降りてテーブルに置いてあった財布と煙草をズボンのポケットに突っ込むとそのまま部屋から出ていこうとするので、瞬く間に私の頭の中は混乱と焦燥で埋め尽くされた。

「え、ちょ…ちょっと待ってよ…!」

数拍遅れてベッドから起き上がった私は彼の後を追いかけると、玄関のドアを開けようとしたところを慌てて引きとめた。確かにセックスはできないけれど一緒にテレビを見たりご飯を食べたり、軽く触れ合ったり…できることは他にもあるはず。動揺でいっぱいいっぱいだったためにはっきりとは覚えていないが確かそんな感じのことを言った気がする。
そんな私に背中を向けていた彼が振り返れば、

「ヤること以外にお前とすることなんかあんの?」

極めて平坦に無気力に放たれた一言。直後にバタンと玄関のドアが閉まった。

普通ならここで最低だと、なんて男だと怒り狂うべきだろう。多分後ろを追いかけて一発拳をお見舞いしても誰にも咎められないくらいだと思う。
だけど当時の私は踊りに踊らされて全く普通ではなかったため、

(そっか…付き合うってそういうものなのか)

身体を繋げることが彼にとって私の存在意義なのだと、取り残された玄関で一人そう納得をしてしまったのだ。
もうあまりにもひどすぎてできる事ならすぐさま殴りたい。男ではなくて過去の愚かな自分を。


*****


私たちの間に沈黙が落ちて、一体どれくらい経っただろう。もしかするとほんの数秒だったかもしれない。だが私には随分と長く感じた間を置いて、覆い被さるように眼前にあったエースくんの顔がずるずると視界の下に落ちていった。私の胸元に顔を埋めるような体制になってしまった後、ふう、と彼が息を吐く。ため息ともとれるそれにびくりと肩が揺れた。

「…えーす、くん」
「……」
「エースくん、その…ごめん」

生理なら前もって言えよ、マジありえねー
あの男と同じ返答を…エースくんがするとは考えられない。考えられない、けれど。ドッドッと胸の中心がうるさい。口の中はカラカラに乾いていた。

「今日の朝に来ちゃって…予定日、では無かったんだけど」

震える口でなんとか言葉を紡ぐ。言い訳がましいこの台詞はしかし本当のことだった。ここ半年から一年近くに渡ってずっと予定日ちょうどかズレても前後一日か二日以内には来ていた。けれど、どういう訳か今月は予定より五日早くそれはやってきて。私もひどく驚いたのだ。そして、同時に愕然ともした。

「ちゃんと、前もって言えばよかったよね」

こんな気まずい状態にさせてしまった罪悪感。反応が無いことへの不安。いろんな思いがごちゃ混ぜになる。ただ水面上にふよふよと漂うだけのような取り留めのない思考回路の中で「ごめん」ともう一度だけ呟いた。


「…なんで」

ふと、鼓膜を震わせた彼の小さい声。なんで。こちらに問いかけると取れるような台詞にすうっと胸の奥底が冷える感覚がした。すると私の頭は頼んでもいないのに勝手にその後に続く言葉を補完する。一語一句とまではいかずとも、どんなニュアンスのことを言うのかを。一刻早く勝手に想像して、そして勝手に傷ついた。
けれど、

「なんで、ナマエちゃんが謝るんだよ」

彼が放ったそれは私の思っていたものと全然違っていて。
ゆっくりとエースくんが伏せていた顔を上げる。バツの悪そうな、思い詰めたような、微妙な表情を彼はしていた。

「ナマエちゃんは狙って今日生理になったのか?」
「それ、は…」
「違ェだろ。女の身体のことはよく分かんねェけど…でもナマエちゃんがそんなに謝る必要がどこにあるんだ」

徐にエースくんが身体を起こせば、ぐいっと力強く腕を引かれる。押し倒されていた身体が持ち上がると向かい合わせで座る体制になった。彼の両手が私の肩を掴む。

「謝るなら、勝手に押し倒したおれだろ。まあ他にその…おれと、そういう事すんのが嫌だった理由とかあったんなら話は別…かもだけど」

言いづらそうにエースくんはそう言って、目を泳がせた。私は瞠目して考える。…嫌な理由。彼を拒む、理由。

「ないよ…なにも、ない」

そんなの無いに決まっている。何度も、何度も首を横に振れば、そんな私にエースくんは「そっか」と零して照れくさそうに笑った。

「なら、いいんだ。そもそもこのためにデートに誘った訳じゃねェし…そりゃ期待してなかった、つったら嘘になるけどよ」
「……」
「外に二人で出掛けただけでも充分おれは楽しかったし嬉しかった」

だから、いい。
エースくんは笑う。瞳を細めて、陽だまりのように嫋やかに優しく。
───ああ、ほんとうに、

「……え、ナマエちゃん?」
「…っ、ふ」
「どうした!?なんで泣いてんだよ!」

エースくんはやっぱり、エースくんで。
ささくれ立った棘が落ちていく。氷のように鎮座していた不安が溶けていく。とんでもない勘違いを抱いていたことが申し訳なくて、同時にそんな自分が馬鹿馬鹿しくなった。だって彼は誓ってくれたじゃないか。過ぎった不安は忘れさせてやるって。一生、大事にするって。その言葉通りいつだって彼は私に必要な言葉を与えてくれる。私はちゃんと、愛されているんだ。
ごめん。ごめんね。本当に、ありがとう。
思いの丈が雫となってぼろぼろと零れ落ちる。当然何も知らないエースくんはそれを前にひどく戸惑っている様子だった。「泣くなよ…」なんて弱った声で涙を拭ってくれる手はいつもよりたどたどしくて。その手つきが殊更愛おしくて、たまらなかった。



「…なァ、ナマエちゃん」

零れる涙が少し落ち着いた頃、ふいに彼の唇が頬に触れると流れるようにぎゅっと抱き締められる。そのまま数回ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスを繰り返されれば至近距離で顔を覗き込まれるので思わず目を瞬かせた。心なしかエースくんの頬が赤い、気がする。

「これは…めちゃくちゃおれにとって都合のいい解釈、っていう自信はあるんだけど」
「……な、に?」
「そんなに泣くほど…おれとえっちしたかった?」

首をかしげたエースくんの照れの色と期待が滲んだ表情。泣くほど…おれと…。

「〜〜ッ!?」

いきなり何を言い出すかと思えば!涙なんて即座に引っ込んで顔へと熱が一極集中する。遅ればせながら言葉の意味を理解した途端、口で言い返すよりも何よりも真っ先に出たのは手だった。

「うぉ!?イテテッ、ごめん冗談だって!」
「〜ッばか!ばかばかばか!」

なんとも稚拙な罵り方をしながらその鍛えられた厚い胸を叩く。もちろん大した力は込めていない。けれど痛い痛いと口にしながらまるでじゃれつく猫をあしらうかのようにエースくんは笑うからたまらずソファに置いてあったクッションを顔面に押し付けた。へぶっ!と間抜けな声がクッション越しに聞こえる。
後々振り返ってみればエースくんはその場を和ませようとしたのかもしれない。けれどこの時の私にはそこまで気が回らなくて。一通り暴れた後にゆっくり押し付けたクッションを外すと彼の顔はやっぱり未だに笑っていた。でも決して揶揄うようなそれじゃなく、慈しみを込めた優しい顔で。

「……っ」

その顔を見たらなんだか自然と力が抜けて、ぽすん、とエースくんの胸に寄り掛かる。不思議そうに私の名前を呼ぶ声が降りてきても構わず額を擦り付けた。
自分にとって都合がいいと前置きした上で言われたエースくんの解釈とやらは正解…ではない。でも決して間違っている訳でもない。

「…泣くほど、じゃないけど」
「?」

私だって今日という日をとても楽しみにしていた。部屋の掃除をしっかりしたり、クローゼットから服を引っ張り出しては一人ファッションショー状態になったり、自分が飲みたいからって言い訳をつけてちょっと高いシャンパンを買ってみたり。浮かれてるな、って自分で思って恥ずかしくなるくらいには。
恋人と部屋で二人きりになる、ということがどんな可能性を孕んでいるのかは十分に分かっている。私たちは子供じゃないのだから。全部全部、分かった上で、それでも楽しみにしていたのだ。

「エースくんになら、なにされてもいいって思ってた」

たとえそんな流れになっても、エースくんが望むのならそれでよかった。だから朝に生理がきたことが分かった時、一番落ち込んだのは私自身で。万が一にも起こり得るのかなんて高を括っていた部分もあったけれど、いざ本当にそういう状況になった時、応えられない自分がひどくやるせなかった。正直今も、心苦しい。

「全部…あげたかった」

私は本当にあげたかったんだよ、エースくん。身も心も、差し出せるもの全て。
上から息を飲む彼の気配がする。おずおずと見上げた先で、乾いちゃうんんじゃないかってくらいに目を見開いた彼と視線が合った。そっちが自分とシたかったのかって聞いてきたくせに、石像になってしまったかのように硬直してしているから私も私でどんどん羞恥が襲ってきてしまって。

「…なんか、言ってよ」

茹だった顔で苦し紛れに呟けば、どもりにどもったエースくんもまた茹だった顔を手で覆い隠す。そして「可愛すぎてどうしよう」なんて言うから、ますます恥ずかしくなった私は熱くてたまらない顔を再び俯かせるのだった。


*****


「…本当に寝るの?」
「嫌なら、やめるけど」
「嫌じゃない…です」

日付もすっかり変わった深夜の寝室、ベッドの上でそんなやり取りを交わす。結局エースくんはそのままうちに泊まることになったのだが、一人暮らしのこの家にあるベッドはもちろん一つだけで。最初は客人用の布団を出そうと思っていた。でもなんやかんやで一緒に寝るっていう話になり、今に至るのだけれど。
二人で横になって同じ毛布を被る。頭の下にあるのは彼の腕。当たり前にすごく距離が近い。少し前にお風呂を済ませたエースくんから自分と同じシャンプーの香りがするのがとても変な感じで、なんだろう、なんかすごく。

(恥ずかしい…!)

何もせずにただ一緒に寝るだけって今時の高校生もびっくりじゃないかな。いや私の事情でしょうがなくこんなことになってるんだけどさ!
全然胸を張って言えることではないけれど、今までそれはもう廃れた恋愛の経験しかしてこなかったためにこういう清廉潔白、純真無垢…とでもいうのだろうか。清いお付き合いというのは生まれて初めてで。非常に落ち着かないし、正直どうしたらいいのか分からない。
一人だと余裕のあったセミダブルのベッドが信じられないくらいに狭く感じる。じわじわと熱くなる顔にとても睡眠どころじゃないと思ってエースくんから背を向けるように寝転べば肩を引っ掴まれて強制的に向かい合わせにさせられた。

「なんでそっち向くんだよ」

ああああもう!近いんだってば!寝れないんだってば!
眼前でムッとするエースくんに思わず手で顔を覆う。すると「こら、顔隠すな」と間髪入れずに手首を掴んでくるものだから思わぬ攻防戦が始まった。鬼かこの人!
必死に抵抗してみたけれど彼に力で敵うはずもなく、早々に手が剥ぎ取られると否応なしに目に入った顔に更に顔が熱くなる。慌てて逸らした視線に何を思ったのかエースくんは顔を覗き込んでくるのでますます私は弱ってしまった。

「み、見ないで…!」
「なんで?」
「〜っ、恥ずかしいの!寝れない!」

もうやけくそだと半ば言い捨てるように放ったそれにエースくんは目を瞬かせる。

「……あ〜…」
「な、なに」
「いや…可愛いなと思って」
「かっ…意味が分か、んん!?」

ちょっと喋ってる途中なんですが!?突然言葉ごと食べてしまうように唇に噛みつかれて肩が飛び跳ねる。器用に寝転がったまま角度を変えては食むように何度も重ね合わせられるそれに次第に酸素が足りなくなって頭がくらくらしてきて。襲う苦しさにドンドンと胸を叩けば、唇をべろりと舐められた後可愛らしいリップ音を立てて唇が離れた。

「っ…!」
「はは…真っ赤。かーわい」
「うううう!」

もうやだこの人!恨めしくエースくんの顔を睨んでも、真っ赤であろう私の状態じゃ全然効果が無いのかくつくつと喉を鳴らして笑われる。それでも甘い瞳を細めるその表情は雄弁に私に対する想いを語っているために怒る気力なんてすぐ無くなってしまうのだから私も大概チョロい。
腰を引き寄せられ、ついでに頭も抱えるように抱きしめられると身体が更に密着する。体温が高いのかエースくんの傍はとても温かかった。真冬の冷えた室内ではその温もりがどうにも心地よくて、されるがままになってしまう。自然と絡まるように触れる足同士。するとふいに私の太ももに何かが当たった。音で例えるとしたら…グリッというのが適切だろうか。決してわざとでは無かったけれど、途端にお互いピシッと空気にヒビが入るかように固まった。

「………えーす、くん」
「………ハイ」

顔を見上げればサッと目が逸らされる。未だに太もも辺りで主張する何か。場所的にこの空気的にそれは何かというか…ナニだろう。たぶん、私の推測だとエースくんの…。

「我慢…してる?」
「いやあ……」

ああ、してるんだな。煮え切らない返事と右往左往する瞳が非常に分かりやすい。忙しなく動かせた瞳がしばらくして私を捉える。すると観念したかのように伏せられて、はあ、とため息がひとつ落ちてきた。

「そりゃまあ…するだろ…好きな人がこんだけ近くにいんだし」
「……」
「あ、別に何もしねェからな!?」

あくまでも情欲の欠片を見せずに言うエースくんに胸が締め付けられる。ああ…本当になんで私、生理なんだろう。気持ちならもうとっくに差し出しているというのに。

「…エースくん、」
「謝んのはナシだぞ」

ごめん。続く予定だったその言葉は根から摘まれるように抑え込まれた。凪いだ水面のように静かな表情をしたエースくんを前に閉口する。「誰も悪くねェんだから」と言われてしまえばもう私に言えることは何も無くなってしまって。

「…ただ」
「…?」
「次ん時に…がっつくかも」

非常に頼りなく、微かな声。その表情からは「誠に不本意ながら」という枕詞が聞こえてくるのだから本当に彼はどこまでも優しい。でも、それなら。私は私で返す言葉は決まっている。

「いいよ、好きにして」

努めて柔く、穏やかに囁いた。こう言っておいても、いざその時になれば優しい君はきっと踏みとどまろうとするんだろうけど。でも最初からずっと私はそう思ってるんだよ。
エースくんはそんな私の台詞に一瞬息を詰める。その後「…すげェ殺し文句」と呟いて少し困ったように眉を下げ微笑った。


*****


胸元から聞こえてくる規則正しい呼吸音。

「……ナマエちゃん」

ぽつりと彼女の名前を呼んでも返事はない。あれだけ恥ずかしい、寝れないと言っていたくせにあっさりと眠ってしまったナマエにエースは小さく微笑みを零した。頭を撫でてやればナマエは小さく声を漏らしながらむず痒そうに身を捩る。でもそれは一瞬のことで、すぐに落ち着いたと思えばまたすやすやと心地良さそうに眠るのだから、随分とまあ気を許されているものだと思った。それが嬉しくあり、同時にほんの少しの恨めしさもあって複雑な気持ちになる。

本音の中の本音を吐露すれば、非常に残念、という思いは当然あった。だけど今回ばかりはしょうがないの一言に尽きる。ナマエにも言った通りこれは誰も悪くない。あえて言うとすれば、こんな状況でも劣情を燻らせるこの馬鹿正直な己の身体、といったところだろうか。それでもナマエは責任を感じてしまっていて、申し訳なさそうに最後まで瞳を揺らすのだからひどくいじらしいとエースは思わずにいられなかった。
エースの中に巣食う欲の獰猛さを知ってか知らずか、ナマエは存外簡単にその身を差し出そうとする。軽いとか股が緩いとかそんなことは断じて、決して思っていない。だが少しくらい躊躇する素振りを見せてくれてもいいのに、とは思う。あれだけ余裕なく欲しがっておいてどの口がほざく、という意見は甘んじて受けるつもりだ。
あまり委ねるように差し出されると、エースは本当に際限なく全てを食い尽くしてしまいそうになる。そんな生半可なものじゃないのだ、己の内に飼う獣の猛りは。そう思うと、やっぱりナマエは何も知らないのかもしれない。

自分の腕の中で眠るナマエの寝顔はあどけなくて可愛らしい。優しくしたい。大事にしたい。そう本人に言えばきっと「もう充分だよ」って笑うのだろうけど。まだまだこんなモンじゃねェ、とエースは思うのだ。
愛されない、というのはすごく辛くて悲しくて苦しくて。
不思議とエースは生まれながらにその痛みを非常によく知っていた。だから…兄弟、友人や恩人、そしてナマエ。自分の手の届く範囲にはどうか。注ぐ愛の種類は違えど、大切な人たちへ惜しみなく与えていきたい。

「…おやすみ、ナマエちゃん」

丸いおでこへ静かに口づけをひとつ落とすと自分より細くて頼りない身体をもう一度かき抱く。その腕の中でゆるりと殊更幸せそうに微笑んだ彼女には気づかないまま、エースはゆっくりと瞼を閉じた。


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