「「ハッピーバースデーなまえ!!」」


朝、一応軽く身だしなみを整えて、グリフィンドールの談話室へといくと、ちょうど階段を下りきったところで盛大な破裂音がした。
寝ぼけていた所に不意打ちの破裂音に驚いた心臓がくるりと一回転した気がする。

反射的に瞑っていた目を開くと、そこにはいつものメンバー+レギュ+セブ。……て、え!?


『なんでレギュとセブがいるの!?』


朝早いせいか、談話室には悪戯仕掛け人の面々以外のグリフィンドール生はいない。
とは言え、犬猿の仲であるグリフィンドール寮に2人がノコノコやって来る筈もない。

わたしだってこの2人と良好な関係を築くのにどれだけかかっk「いえ築いていませんから。」……ひどい。なまえちゃん泣いちゃう。


『レギュ酷いわ!わたしの事なんて遊びだったのね!』

「ややこしくなるような事を言い出さないでください」

『わたしの身体だけが目的だったのね!』

「もうあなた面倒くさい…」


わたしをブロークンハートするだけして、もう一度壁にもたれかかりブロンズの像となったレギュラスをちらりと見て、セブは不本意そうに口を開いた。


「朝早くに、なぜかスリザリンにいたこいつらにグリフィンドール寮に来るように脅されて断ったら、担がれて無理矢理ここまで連れて来られたんだ」

『ちょっ可笑しい可笑しい!なんでこいつらがスリザリンに入れたんだっつーの!』


と騒いでから思い出した。


「え、なになまえは僕がそんなことも出来ない人間だと思ってるの?」

『すみませんでしたっ!!』


にこやかな笑みを浮かべるリーマスの絶対王政に不可能はない。

改めてその恐ろしさを痛感したわたしは、ふと疑問を口にする。


『ていうか、……なにこれ?』


目の前に並ぶのはカラフルなお菓子たち。真ん中には小ぶりだけど灯りの灯されたロウソクつきのケーキもある。

首を傾げるわたしにシリウスがどやる。その顔ムカつくからやめろって。


「だって今日はなまえの誕生日だろう?」

「僕たちからの気持ちさ!」

「誕生日おめでとうなまえ!」

「おめでとうなまえ!いつもありがとう!」

「……おめでとう。」

『あ、ありがとうっっ!』


やばいちょっと泣きそうだ。ここのとこテストやなんやらで忙しくて、誕生日のことなんてすっかり忘れてた。


『持つべきものは友人だね!ありがとう!嬉しいっ!』

「いやいやなまえが喜んでくr「ああ、おめでとうございます。じゃあ、僕はこれで」

『ちょっとレギュラス空気読んで』


さり気なく言って、退室しようとしたレギュラスを羽交い締めにして退却路を阻む。


「チッ」

『ちょ、舌打ち止めてほらセブを見て!なんだかんだで状況に流されて、自然に祝ってくれてるでしょ!?あの苦労人オーラを見習って!』

「ああ、セブルス先輩ってまた老けましたよね」

『ちょっとそれ禁句!』


容赦のないレギュラスの口を無理やり塞いで、部屋の隅に追いやる。

爽やかに空気を読まないジェームズが微妙な空気(ほらセブが心閉ざしちゃったよ!)をぶち壊した。


「本当はね、この誕生日パーティーはシリウスの発案だったんだよ」

『そうなの!?』

「うん。そしたらシリウスがスニベルスや弟君も呼んだ方がなまえも喜ぶって言ってね。急遽2人を攫ってきたんだ」

『そうなんだ本当に嬉しい。ありがとう!男子寮に忍び込んで夜寝てるシリウスの顔に鶏って書こうとしてごめん。超ごめん。』

「はあ!?」

『だけじゃなくて実行してごめん。あとう●この絵も付け足してごめん。』

「はああああああっ!?」


シリウスは大層な悲鳴をあげてローブから手鏡を取り出した。
ほら、すぐに取り出せる位置に手鏡を置いてるのがキモい。あ、嘘えーと…美意識が高くてすごいと思う。わたしには到底真似できない。
……したくもないが。

2回目の悲鳴と、弾けた笑い声。


「にににににに鶏って何だよぉぉおおお!なまえお前なにしてくれてんだよぉぉおおお!!」

「ブハハハハハ!シリウス本当に気づいてなかったのかい?」

「お前にピッタリの間抜けな落書きだと思ったがな」

「ヘタレな兄さんにピッタリですね」

『ちなみにリーマスに製作協力していただきましたー☆』

「しちゃいましたー☆」


とっても楽しそうなリーマスとハイタッチを交わすと、シリウスは脱力したかのようにヘニャヘニャと肘掛けいすに倒れ込んだ。
なんちゃって魔王様に不可能はない

そんなシリウスを見て鼻を鳴らすのはレギュラスで。


「もう帰っていいですか?僕なるべく兄さんと同じ空気を吸っていたくないんですよね」

「おま…実弟だというのに容赦ねえなあ…!!」

「あなたの実弟なんて僕の黒歴史ですから公言しないでください」

「お前黒歴史なんて言葉どこで覚えたんだっての。もうやばい超泣きそう!おれ超かわいそう!」


なんていつもの兄弟の掛け合いに笑っていたら、ちょうど起床の時間になって来たのかグリフィンドール生が次々に談話室に降りてきて。スリザリン生の2人を見て騒ぎ出したので、わたしはまだシリウスを苛めているレギュラスを引っ張って、談話室をあとにした。

ちなみにセブは真っ赤になりながらも、ちゃっかりとリリーを誘って朝食に向かったようで、談話室の扉を閉めるとき、きのこが2つ見えた気がした。

わたし達も大広間に向かって歩く。


「はあ。やっと解放されましたねー」

『うんそんな嬉しそうな笑顔はちょっと傷つくかな。ていうかレギュラス、今日は一段と機嫌悪かったくない?』

「……そうですか?」


ええ明らかに。とは言えないので曖昧に笑ってごまかした。


『どうして機嫌悪かったの?』

「……なまえさん、今日が誕生日だったんですね」

『ふぇ?…あ、うん。』

「兄さんは誕生日知ってたのに僕には言ってませんでしたね」

『え、ちょ、ちょっと待って!言ったら祝ってくれたの?』


慌てて少し先を歩くレギュラスに問いかけると、自分の失言に気がついたのか耳の裏まで真っ赤にしたレギュラスがいた。

後ろを振り返らず照れてるのか1人でずんずん歩くレギュラスに笑みがこぼれた。かーわい


『もうっレギュラスってばツンデレなんだからあ!』

「つんでっ!?」

『だったら来年は、1番に祝ってよね!』







些細なある日のサプライズ
















Happy Birthdayむぎちゃん!親愛なるむぎちゃんに勝手に捧げます
この年がむぎちゃんにとって素敵な1年となりますように。





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