今日も元気に日曜日!(1/2)
「わりぃ遅れた!」
遠目で見てもブン太だとわかるド派手な髪を揺らして、駆けてくるブン太に思わず笑い声がこぼれた。
「初デートで遅刻とか最悪!」
と言ってやると、さすが運動部。息切れひとつしないで焦ったようにワタワタしている。
「いや、その楽しみ過ぎて昨日寝れなかったというかっ!……まじですんませんしたっ」
「しょーがないクレープ1個でガマンしてやるよ。」
「げっ!ここのクレープってめっちゃ高くね!?」
―――ここ。
めでたくカップルとなったわたし達は今、遊園地に来ている。
昨日みんなに報告すると、回りくどいとか、遅いとか、不釣り合いとか、1ヶ月保たないだとか、とにかくみんな歪んだ祝福をくれた。ブン太はキレてたけど、みんなも、幸村も、笑っていたからそれでいい。
「遅刻した分際で文句いわなーい」
「うぐっ……」
「ていうか、みんなと一緒じゃなかったんだね。みんなも遅れるっていうから、てっきり……」
「み、んな…!?」
嫌な予感がして、振り返ったブン太の目に入ってきたものは、
「「お待たせ〜〜!」」
天下の立海テニス部レギュラーのみんなだった。
相変わらず派手なやつらで、目立つことこの上ない。
「なななななななんでお前らがいるんだよぃ!?」
「え、ブン太が誘ったんじゃなかったの?」
「んな訳ねーだろ!なにが悲しくて初デートにこんなお荷物連れてくんだよ!」
ひたすら焦るブン太の様子にレギュラーみんな爆笑してた。
そんな中で一際楽しそうな幸村。……やっぱり歪んでる。
「ブンちゃんが初デートで失敗せんように心配してやったんじゃ。」
「いいデータが取れそうだからな」
「丸井先輩だけズルいっす!おれもむぎ先輩とデートしたいっす!」
「私は止めたんですがね……」
「わ、わりぃブン太…」
「子供だけで遊園地とはたるんどる!!」
「真田うるさいよ。ていうか、」
満面の笑顔を見せてくれた幸村に冷や汗が出たのはきっとわたしだけじゃないハズ。
「むぎの誕生日にデートなんて、そんな美味しいとこ、おれが独り占めさせるとでも思った?」
「「ひぃぃいいいいいい!」」
幸村の背後になにかドス黒い見えるよ!気絶しそうな赤也に心から同情するよ!
ブン太ももう何も言わない……とばかりにゲッソリとやつれた顔を見せてくれた。
わたしは、うんまあ…こんな状況が、こんな面子が、案外?好きだったりする。
それに。レギュラーとじゃれ合ってるブン太はすっごく楽しそうで、そんなブン太を見ているだけでわたしはそれなりに幸せだ。
「むぎちゃん、」
「ゲッ…仁王……」
幸村にイジメられながら赤也とじゃれ合うブン太を眺めていたわたしの肩に、仁王の顎。いきなり乗せるなよ。びっくりするわ。
「ゲッて何じゃ。傷つくのう…」
「ちょっとわたしの肩に回したこの手はなに?」
「ブンちゃんをからかうネタじゃよ。さーじゃあむぎはおれと楽しもうかのう?」
「ふっっっっっざけんなぁぁああああああ!!」
わざと語尾だけ聞こえるよう大きくした仁王に、まんまと引っかかったブン太は慌てて飛んできた。
そんなブン太がちょっと嬉しくて?わたしも乗ってみたり。
「そうね、仁王…ねぇちょっと抜け出さない?」
「むぎがその気なら。じゃあ向こうでいいコトしようかのう?」
「ちょっと待てふざけんな!むぎもなに乗ってんだよ!!」
「ごめんつい。」
わたし達のやり取りにみんな爆笑して。それがまた楽しくて。
この時間が永久に続きますように。
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