笑い笑われ木曜日(1/2)






わたしの小さな変化に気づいたのは意外にも仁王だった。

まあ鋭そうではあるから、当然っちゃ当然なんだけど。それでも少し驚いた。



「のうむぎ、髪切ったん?」

「んぁー?」

「……お前さん女子!」


部室の小さな机に頬杖をついて欠伸を呑み込んで返事をすると、なぜか仁王が怖い顔をした。ん?ああ、そゆことね。今さらわたしに女子とか何かと思っちゃったよ。知ってるっつの。失礼だね仁王くん。



「まあ今時女子ってこんなもんだよ。女子で集まったら普通に下ネタとかするし、ガールズトークは美容っていうよりムダ毛の話だし、今日「はね、あの話で盛り上がったんだけど、ほら仁王、恥骨ってどこの骨k「あーあーあー!」……どうかした?」

「聞きとうない……女子に夢が持てんくなる…」

「今時の女子に夢を持とうとすんな。だいたい仁王なんて女子のキタない所なんて散々見てきたでしょう」

「まあのう。誘ってきたまあまあ可愛い女を脱がしたらムダ毛の処理が甘かった時は萎えたのう……」

「キタないの意味ちげえ。ごめん流石に男子と下ネタトークする気はない。特にあんたのは生々しくて嫌だ」

「むぎちゃん酷いナリ〜」


いやわたしにそんな甘いお色気ボイス出されてもどうにもなりませんけどね。あ、こいつの場合は万年こうか。うん万年発情期のエロ詐欺師!



「じゃが、今の話はぜったいに赤也にするんじゃなかよ。」

「え、」

「赤也はアレじゃー女子は女の子だと思っとるタイプじゃからのう…夢を抱きすぎとる。」

「うわ〜……それ赤也ぜったい潰れるよ。あいつが『Crash You』だよ?」

「英語にした意味が分からんナリ。女子のうるさい昼休みの話は、恋バナか昨日つくったお菓子か美容の話をしてるんかと思っちょる奴じゃ…」

「あんたとは別の意味で女子の敵だな。だから今日は恥骨の……」

「げふんげふん。」



さしもの仁王も女子の下ネタは聞きたくないらしい。いや下ネタじゃないけども。とにかく着替え終わったらしく、見なれた芥子色のジャージに袖を通した仁王は涼しそうな外へと飛び出していった。

わたしも、この無駄に長い会話をしている間に日誌も書き上げたし、ちょっと外の空気でも吸って休憩しようかな。


休憩が多いだなんて言わせない。






*




「行くッス!ナックルサーブ!」

「頼むぜっジャッカル!!」

「おれかよっ!」

「妙技、鉄柱当て――天才的?」

「くらいなさいレーザービーム!……プリッ」

「先輩ら潰すっスよ?」




一見……いや一聞すると熱心に練習をするテニスの王子様たちのようだが、実際は、




「あんたら、なんでテニスコートでバドミントンやってんの?」




バドミントンの王子様をやっていた。

部室を出たところのテニスコートで彼らが技をキメていたのは、テニスではなくバドミントン。それはもう今現在授業でやっているわたしとは比じゃないレベルの規格外の技を。


お前ら……



「テニスしろテニス……」

「だって全部置いてあったんだぜ?」

「このシャトルもラケットも!あ、まだ有りッスよ!むぎ先輩も一緒にやりません!?」

「仁王君!私に変装して遊ぶのはお止めなさい!」

「や、ら、な、い。幸村に見つかったらどーすんの?」

「ピヨ。……柳生小姑みたいナリ〜」

「大丈夫だぜぃ幸村君と真田は部長会議に出てるから☆」

「なんだ。じゃあわたし今日の部活サボれば良かった。」

「「おい。」」



冗談はさて置き。うそです本音です。あ、柳生に扮した仁王が柳生に扮した柳生に怒られてる…ん?え、あの仁王が実は柳生で、仁王が柳生で仁王?あれ、おかしい…頭こんがらがってきたぞ。

せっかく作ったドリンクが勿体無いので、熱心に練習している平部員にまず配り、そのあとバドミントンの王子様(仮)に配るとする








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