今日も元気に日曜日!(2/2)
始まりはいつも突然で。
「なあ次なに乗る!?」
「おれはむぎとお化け屋敷に行ってくるよ。」
「え、ちょ幸村君…!?」
「おれは真田を連れてメリーゴーランドに行くナリ。」
「え、お化け屋敷やだ。ジェットコースターにしようよ。」
「おれパレード見たいっす!」
もし、わたしが幸村と席が近くじゃなかったら?
仲良くなってはいなかったし、
いっしょにジェットコースターに乗ってなんかなかっただろう。
「あーもうむぎはおれの彼女だっつーの!もういこーぜ!」
「うわっちょ!!」
もし、わたしがあの時、忘れ物をとりに帰ってなかったら、
こうしてブン太に手を握られて、走ってなんかなかったかもしれない。
「むぎー!今からサプライズしてやるから、2人で観覧車乗ってきなよ」
「ブン太…幸村がなんか叫んでるけど……」
「つか言ってる時点でサプライズじゃねーだろ……」
「まあ乗ろっか。ちょうど夕方になってイルミネーションも綺麗だし、」
わたしとブン太は対になってる双子の観覧車の一方に乗り込んだ。
わたしとブン太を乗せたゴンドラがてっぺん辺りに来たとき、わたしとケータイに幸村から着信があった。
「もしもし?」
《目瞑って。今からおれらが10数えたら目あけろよ。》
「え、え、え?」
《《10!9!8!7………》》
受話器からみんなの数字の大合唱がきこえてきた。ブン太にも促されて、わたしは目を閉じる。
《《2!1!》》
0のカウントで目をあけたと同時に見えてきた景色と、幸村の声にうっすら涙がこぼれたのはわたしの秘密。
《ハッピーバースデーむぎ!》
向こうの、もう一対の観覧車。その観覧車にライトでつくられた『ハッピーバースデー』の文字。
「誕生日、おめでとうむぎ」
「こ、これ……!」
「幸村君たちからのサプライズ。跡部に頼んだらしい。こんなんの後だとショボいけど、」
ちょっと気まずそうなはにかんだ笑顔で、ブン太が差し出した小包。
あけると出てきたのは手作りといった風情が嬉しいカップケーキだった。ブン太らしくて、嬉しくて、幸せ過ぎて、泣きそうになった。
「ありがとう。嬉しい…」
「今はこんなんしか渡せないけど、来年はすげぇの用意してやるから楽しみに待ってろよ!」
「うんっ!」
もし、わたしがマネージャーを承諾しなかったら。
わたしは今、こんな素敵な仲間といっしょに時を過ごしてなどいなかっただろう。
「むぎ誕生日おめでとう。」
「おめでとうっす!」
「おめでとうナリ?」
「おめでとうございます」
「おめでとう!」
「ごほん。全くめでたi…」
「おれたちからのサプライズは喜んで貰えたかな?」
毎日がすんごく忙しくて。
ぐるぐる目まぐるしく回ってて。
そのひとコマひとコマが楽しくて楽しくて。
こんなキラッキラした毎日は送れてなかったね。
「うん!すっっっごく!」
何より、
「て、仁王!なにむぎの肩に腕回してんだよ!もういい!むぎ行くぜ!」
「え、ちょ、なんかデジャヴ!」
いつだって、わたしの手を取っていっしょに走ってくれる
こんな素敵な彼氏はできなかった。
今が楽しければいいと思ってる。
だれも未来のことなんて分からないし、
もし、なんて言い出したらキリがない。
だからわたしは、
だからわたし達は、
「ブン太っ!」
「なんだよ!?」
「好きだよ!」
走りながらブン太に叫ぶと、途端に赤くなる君。
この今を、この一分一秒を。
「っおれも!!!」
大切に、前を向いて生きていこう。
自信家で、ちょっぴりナルシストで、でも誰にも負けない努力家で、恥ずかしいセリフをさらっと言っちゃうくせに、なんだかんだで照れ屋な君。
なにより青春少年みたいに、一生懸命テニスをする君。
そんな君の、1番近くで笑っていたいから。
優しくてかわいくて綺麗で、そんでちょっぴり残念な、わたしの大切な大切な大切な、
親友に贈る物語。
Thank you for looking!
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