『ん…んー!!』

「どうしたんだい?」


書架の間で必死に背伸びをしていると、いつの間にか背後に立っていたルーピンに声をかけられた。


『…ルーピン、いつも突然現れるよね……』

「そうかな?」


ふふふ、と笑う彼に震えるわたし。それより、と彼は続ける。


「どうかしたの?」

『あ、えっと…あの1番上の本を取りたいんだけど、届かなくって…』


図書館の書架の1番上はとても高いんです。決してわたしがチビだから、というワケではない…はず!


「はい。これでいい?」

『あ、ありがとう…』

「……何でそんな泣きそうなの?」

『いや違うようん。決してわたしの背の低さを再確認して泣きそうになってるワケじゃないからね?』

「ははは。僕は背の低い女の子可愛いと思うけどね」


どうしようルーピンが輝いてみえるよ…!


「『闇の魔術〜防衛理論〜』?ナマエこれ勉強してるの?」


というルーピンの声で現実に引き戻されたわたしは、苦笑い。


『え、あーそうなの。わたしソレ苦手でね…』

「ふーん…」

『授業とかはいいんだけどね、実技になるともう…。だから理論から入ろうかと』

「ナマエって中途半端に真面目だよね」

『…ルーピンってサラッと辛辣だよね。傷つくよ?』


わたし泣いちゃうよ?


「冗談だよ。それよりルーピンってなんか他人行儀だね。ファーストネームで呼んでよ」

『え、……』


ほら早く呼べよ、みたいな笑顔を向けてくるのは止めて欲しいな。


「僕もナマエって呼んでるし」

『…それは所見からそう呼ばれてた気がするけど……』

「んなことより、ね?」

『う……えっと…リ、リーマス?』

「そう。」



にっこり笑うリーマスに、赤くなった頬を見られたくなくて、わたしは俯いた。




***




「それで、ナマエは何が苦手なの?」


書架から場所を移動して、ここは図書館の自習室。

目の前にはルーピン先生。


『…ぜんぶ。』

「えー…」

『だ、だって!闇の魔術とかっ、杖を使うの苦手なんだもん』


あ、でも妖精の呪文は好きだよ?あと魔法薬学も。

そもそも防衛術とか、使う機会なかったじゃん…


「だから理論からってナマエらしいけどね。ほんと中途半端に真面目なんだから…」

『ほっとけ。』

「理論よりも実践だよ。実践するうちに出来るようになるから」

『出来る人の言い分だ…!』


これだけ卑屈なのは立派な理由がある。昔シリウスにも似たようなことを言われ、実践して散々な目にあったことがあるから。
あの日からだ。わたしとシリウスの仲が非道いものとなったのは。


「…ねえ、ずっと気になってたんだけど、ナマエとシリウスってどんな関係なの?」

『従兄弟だよ。』

「ふーん…て、え!?」

『ていっても義理だし、遠縁なんだけどね』


ブラック家の考え方は理解できないって、お父さんが若いころ家を飛び出して勘当されてるから、ブラック家との繋がりはないけどね。

と言うと、リーマスはにっこり笑った。


…胸がひときわ高鳴ったのはきっと気のせい。


「だったら尚更、ちゃんと勉強しなきゃね」

『えー……』

「このご時世いろいろ危ないからね」


マグルへの関わり方で意見が別れてきている今、揉めたなんだのニュースをよく聞くようになった。

それはそれとして、今の言い方ものすごくオバサン臭かったんだけど…


「なんか言った?」

『いっいえっ!』

「…まあナマエがそんな目に遭っても、僕がぜったい助けてあげるから心配はないけど」

『!…………』


優しく微笑んだリーマスはとても格好良かったので、さっきの台詞は忘れてあげることにした。






未来の、約束?

(それはともかく、)
(勉強はしてもらうよ?)

(ぇええええええ…)







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