《――選手は集合してください》


そのアナウンスをキッカケに、わたしはみんなとお別れし、レイブンクロー寮の陣地についた。


『やばいよ。ねえ、やばいよやばい』


するとチェイサーの女の子はあっさりしたもので、ナマエやばいしか言ってない。と冷ややかな視線を送ってくださった。

違うよいや違うくないけど緊張でガタがアシアシなんだよ。
間違ったガタがアシガタなんだ


「それすら違うけど、そんなに緊張しなくても楽しめば?」


とこれまた余裕たっぷりベテランの貫禄を見せつけてくださった。

初めてのクディッチで緊張しているのに、なんて冷たい友人なんだ。
なんかわたし可哀想!


「これがあたしの愛情表現なの。てか、この場合はポッターとブラックが哀れだわ」

『え、どうして?』

「だってナマエを傷つけたら出てくるのはルーピンだし、迂闊なこと出来ないでしょ」


どういう意味?と聞いても自分で考えな、と冷たい返事が返ってきた。
これが彼女の優しさだと分かっているけれど。
そんな優しさなんて捨てちまえ、とチラリと考えてしまった。

でも……でも、よく分からないけど、試合するなら正々堂々と戦いたい。

つまり、そういう事だよね?


「あーなんかナマエの鈍さがルーピンにむごい」

『え!?』

「なんでもないから。ほら準備はいい?もうすぐ試合開始よ!」

『おーっ!』


多少ごまかされた感は否めないけど、試合開始!

さあがんばろう!



***



「両者整列!礼!」

「「よろしくお願いします!」」


礼をして、顔をあげると目の前はシリウスとポッター君だった。

いつもヘラヘラしてるシリウスも、この時ばかりは真剣そうな顔をしていて。
ちょこっとだけ見直した。


「よろしくミョウジさん」

「お互いがんばろーぜ!」

『こちらこそよろしく!』


慌てて差し出された手を握り返して、笑い合う。

ここまでくると爆音を立てていた心臓も落ち着いてきて。
わたしも選手なんだなあ、と実感したりする。


『―――ねえシリウス、』

「なに?」

『わたし初心者だけどさ、気にせず戦ってね』

「え、」


《試合スタート!》


ホイッスルと共に、みんな空に飛び上がった。

シリウスは一瞬遅れたけど、すぐに飛び上がってわたしに拳を突き出した。



「もちろん!いい試合にしようぜ!」

『ありがとう!』


さあ試合開始。楽しもう。

スタンドから手を降ってくれているリリーとリーマスを見ていると、自然とそんな気持ちになって楽しくなるんだから不思議だ。

にっこり笑って手を降ってくれたリーマスに小さく手を振り返して、わたしはスニッチを目で追った。








正々堂々と

(リリーが僕に手を振っている!)
(違うよポッター君、リリーはわたしに振ってるんだよ)

((…………))

((絶対負けない!))







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