「ねえナマエ。」
図書館で生物学のレポートを仕上げていると、肩を叩かれた。
振り返ると利発そうな美男子が。
彼は確かグリフィンドールのリーマス・ルーピン。悪戯仕掛け人の参謀とかなんとか。
『はい?』
わたしに何の用だろう…
わたしの所属するレイブンクローとグリフィンドールは、敵対こそしていないけれど、特別仲良くもないはずだ。
そもそもわたし初対面…
「初対面じゃないよ。何度か廊下ですれ違ってるしね」
『いや、それを初対面っていう…』
ていうか何気に心読まれた?
「え?読んでないよ?」
『すでに読んでるじゃん…』
まさか一部のウワサ通り、彼は黒属性なのか…!
いやわたしはこの爽やかな好青年が魔王だなんて断じて認めない!
「嫌だなー黒属性だなんて。ちょっと黒魔術に精通してるだけだよ。お手軽便利だよね黒魔術って」
『……………。』
「ちなみにさ、僕のナマエに魔王とか吹き込んだのはどこの誰?」
全然ちなみにって顔してない、ものっすごい笑顔で訊ねるルーピン。
それはもちろん可愛い可愛いリリーなんだけど、言えば彼女の命が危ない…!
てゆうか何気に所有宣言?
『えー…と、風のウワサ、かな?』
「ふーん。それで誰?」
『……あー…ほらグリフィンドールのー…シリウス?』
ごめん魔王のプレッシャーの中、
(気圧が下がったのは)
(気のせいだと信じたい)
悪戯仕掛け人の中で真っ先に出てきたのはシリウス・ブラックだった。
まあ彼とはいろいろあったしね仕方ない。
「シリウスね。ふーん。嬉しいよな」
な、に、が?
「ちょうど新しい黒魔術を試してみたかったんだよね」
……………
生贄がシリウスに決定した瞬間だった。
ごめんねシリウス!でもこれで今までの恨みチャラにしてあげるから!
「あ、シリウス来た…」
『マジで!?』
ルーピンの言葉通り、シリウスが図書館へやってきた。相棒のポッターと共に。
天才的な間の悪さだね!
「ふふふ〜ん。このくらいの距離がジャストなんだよねー」
笑顔でブツブツ言いながら、何かを準備するルーピン。
(なにそれ怖い…)
とうのシリウスは、ポッター君とじゃれ合いながら、スリザリン寮の子に何かを仕掛けようとしている。
(たぶん相手はスネイプ君…)
「あ、今から行うからナマエは目を瞑ってた方がいいよ?内臓とか出てきてグロテスクだと思うし」
『そんなレベルなの!?』
いくらあいつがどM気質でもそれは死んじゃいうよ!?
「大丈夫だいじょうぶー《クルーシオ》程度で止めるから」
許されざる呪文をサラッと言って、わたしに笑顔を向けると、
(それはもう清々しいほど爽やかな)
魔王の黒魔術講座は始まった。
お手軽便利な黒魔術
(ぐぶぎゃぁああああげぇぶう!)
(ど、どうしたシリウス!)
(…闇の魔術に対する防衛術の授業、これからは真面目に受けよう……)
← →
戻る