「どうしてナマエはそんなに元気がないの?」

『どうしてリーマスはそんなに楽しそうなの?』


にこにこと爽やかに笑うリーマスと、意をキリキリ痛めて朝食が並ぶテーブルに突っ伏しているわたし。

なんて対照的な光景!


「人間ってアンバランスとか反対の物に惹かれるらしいよ」


そうなんだ、以外に返しようのない話を披露してくれるリーマス。

とりあえずそうなんだ、と返す。


『ていうかリーマスがレイブンクローのテーブルで朝食を取ってる事にみんなスルーなの?』


あまりにも自然にいたから気がつかなかったけれど、ここってレイブンクローの席だよね?
リーマスってグリフィンドールだよね?


「別に良いんじゃない?」


目の前に座る友人はあっけらかんと言い放つと、糖蜜パイを片手に席をたった。


「じゃあわたし向こう行くわね。後は若いお二人で〜」


リーマスに軽く会釈して、友人は隣のテーブルへ移動してしまった。


『どこのオバサンだよ……』

「なんで?気の使えるいい子だったじゃないか」


いやいやいやいや。どこのお節介オバサンだよ、って話でしょう。
お見合いか。


「それより朝食に全く手をつけてないけど、どうしたの?」

『リーマスううう〜!』

「ん?」


…彼は異常なまでに糖蜜パイとゼリーをお皿に盛りながらも、一応は聞いてくれているらしい。

今にも泣き出しそうなわたしに慌てたように糖蜜パイをひとつ差し出してくれた。

(うん、でも何か違うよね)


『わたし、』


口内にこびり付きそうな糖蜜パイを必死に噛み砕いてから、わたしは口を開いた。








『今度のクディッチにシーカーとして、出ることになった……!』


***


「……で、ナマエはホウキ得意なの?」

『………ぜんぜん。』


いや謙遜とか一切抜きでマジでリアルに。

せいぜい平均より少し上レベル。間違っても寮対抗の試合にシーカーとして出るなんて有り得ない。


「なんで出ることになったの?」

『話せば長いんですが……』


一昨日シーカーとして出場する予定だったレイブンクローの男の子が、ホグワーツの問題児2人組の悪戯に巻きこまれて負傷した。

(あえてどこの誰とは言わないが、)
(リーマスの目が光ってる)


『それで、みんなビビっちゃって。わたしに回って来たんだ。わたしなら悪戯される心配ないからって』


どういう意味か分かりかねるけど、みんながニタニタ笑ってルーピンの名をあげるのでなんとなく分かってきた。

………友達だから。


「…で、引き受けたんだ?」

『だっ、だって!みんな困ってたんだもんっ』

「………お人好し。」

『うるさいな。』


わたしだって断りたかったんだよう。いやマジで有り得ないもん

でもあんな目で見られて断れる人間いんのかよっつーの


『…リーマス?どこ行くの?』


気持ち悪い程のデザートの山を片付けて、リーマスは席をたった。

(しつこいようだけれど、レイブンクローのテーブルだ)


「スタジアム。練習、するんでしょ?」


付き合ってあげる、というリーマス。
その姿に後光が差したように見えたのはきっと幻覚じゃない。


『リーマスううう!ありがとうっ!』

「はいはい。ていうか、次の対戦相手知ってるの?」

『知らない。…どこ?』

「グリフィンドール」

『えっ……』


え…?

ホールにわたしの悲鳴が轟く5秒前。


『ええええええええええええええええええええ!!!』








糖蜜パイを片手に

(まあ僕はジェームズやシリウスを応援する気にはなれないし、別にナマエを応援するけどね。そうだろうあんなバカなヘタレを応援するなんて反吐が出そうだよ)

(り、リーマス…)





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