「おはよっ」

「おはよう(ゲッソリ」

「…なんか長太郎君やつれてない?」


朝1番に会ったクラブメイトの顔があまりにやつれていて、すごく驚いた。

そうか今日はバレンタイン。
テニス部の皆さんが毎年死ぬ思いをする大変な日だ。

しかも長太郎君は、


「あーっ!!鳳君いたわっ!」
「ほんとっ!長太郎君!ハッピーバレンタイン!」
「それと、」
『お誕生日おめでとう!』


キャピキャピと手作りらしきチョコレートを差し出す女の子たち。
「ありがとう」と返す長太郎君の笑顔が引きつっていた。

彼はそう、乙女たちが戦争を繰り広げる、今日。
2月14日が誕生日なのだ。


「うわー長太郎君またすごい量だねえ…」

「ははは…。有り難いことだよね」

「ぜんっぜん有り難そうな顔してないけどね」

「そんなことないよ。特に今年は欲しいチョコレートをもらってないしね」


長太郎君の欲しいチョコレート?
GO●IVのチョコレートとかではないんだろうけど…。

これだけの量を持って帰るのすら、大変そうだ。
長太郎君の笑顔が引きつってるのも、無理はないと思う。


「そんな長太郎君に!」

「ん?」

「バースデー アンド バレンタインのプレゼント!じゃじゃーん!」

「ありがと…。これ…袋…?」

「イエス!大量のチョコを持って帰る為の手提げ袋だよ!」


長太郎君へのプレゼントに悩んだ結果がコレ。
チョコレートじゃあまりに定番すぎるかと思い、
去年そうとう苦労していた様子を思い出して選んだのだ。

ちなみにトトロ柄。
噂によると長太郎君はジブリよりディズニー派らしいけど気にしない。


「あ、ありがとう…。さっそく役に立ちそうだよ」

「うん!じゃあわたしもチョコ配りにいくね!お誕生日おめでとう!」

「ありがとう。」

「ばいばい!」


*


「(誕生日を覚えててもらったのは嬉しいんだけど…、)」


長太郎は足早に去っていくなまえの後ろ姿を見つめた。


「(おれが欲しかったチョコレートって君からのなんだけどなあ…)」


まあいいか。と気を取り直して開いたトトロ柄の袋からでてきたピンク色の小包。


「!!」


それは紛れもなく。




甘い甘い、恋のチョコレート。
(やっぱりベタかなあ、なんて心配は)
(どうやら杞憂だったみたい)







「チョコレートありがとう!」
「うん」
「これは、そういう意味でいいのかな?」

そう言って笑った長太郎君に、肯定の意味を込めてわたしは。






2012/02/14 19:09
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