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話しを続けていると、突然何の前触れもなく腕が顔へ伸びてきた。
「─ぬわっ!?」
急に視界が無くなった。
電気がついているそれだけがわかる。
つまり
眼鏡を取られましたっ!
「…ちょっ!めがねっ」
オレはプチパニック状態で闇雲に腕を伸ばして探した。パチパチと瞬きをして凝らしても全く意味を成さないのは知ってるけど、癖でしてしまう。
案の定、見つからないので流君のYシャツを引っ張って催促するけど、いつものタバコの匂いがほのかに香ってくるだけで一向に返してくれる気配がない。
「…いじわる」
ボソリと呟いて、諦めて離れないように流君の服をギュッと掴んだ。ずっと、目を開けてるのも疲れるので目を瞑って若干ふてくされる。
「…へ?」
だけど数秒後
急に、メガネの重みが戻った。つられて、瞑っていた瞳を開くと流君が足を組んでその上で頬杖を付きながら煙草を吸って居るのが見える。
今日は返してくれないのかと思った…
意味もなく取られるのは、まぁ…たまにあるけど、こんなに早く返してくれるのは初めてだ。
内心ホッと安心しつつ、こてんと不思議に思っていると、
「…さぁな」
じっと見ていたらしい目を反らして、心を見透かすようにそう答えた。
「……?」
なっなんなの?!
オレ何かしたっ?
流君は何も答えぬままにテーブルに置いたコーヒーをそれはもう格好いい動作で口をつけていた。
何しても
格好いいけど
オレは「もーっ」と息をはいて諦めて、サンドイッチを頬張ったのでした。
流君が不思議なのはいつもの事だもんね。
◇◇◇
数時間後。
また仕事で出ていった流君を見送ってから、ガラス窓に映った顔をふいに見てみるとちょっと違和感を感じた。
不思議に思って鏡に走って見直してみると、なんと
眼鏡が変わってました!
じっくり見ると
フレームが、えっと…これわいん色って言うのかな?落ち着いた綺麗な色で、ピンクっぽい紅い石が嵌め込まれた小さい蝶が左の側のテンプルにとまっている。
「かわいい…」
驚きすぎて心臓とまるかと思ったよ。
だって思いつくのは今日の流君の行動だけで、きっと流君がくれたもので…考えただけでも頬が緩んだ。
以前掛けていた黒縁眼鏡はベッドの上の棚にある眼鏡ケースにキチンと入ってました。
______________fin
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