11完
あたたかい。なんだろう。
そう思って目を覚ます。
「!?」
と、なんと流生の腕の中。
何故に!?さっきまでは、戦場の机上だったはずだ。
あの場を邪魔した事に何のお咎め無く帰って来れるなんて思えない。
それに、なんと言っても流生の腕の中なんて、、。いつもは触らせてもくれないのに。
そして、
「りゅ、流君?オレ死んだんじゃ」
スマホを弄っている手をやめ流生はこちらをみる。
伊呂波を見る瞳が少し燃えているように煌めく。
「・・・お前は俺のだ。」
言い終わった流生は、ガブリと伊呂波の首筋に牙を這わせた。
「いっ!?、、、ぅあっ。痛いいたぃっ。」
肩を押すけれどびくともしない。
異常な痛みで、何故か伊呂波の最後の糸が切れた音がした。
ヒュッと喉が鳴る。
「りゅ・・・くんが、」
掠れた声を喉から絞りだした。
唇を一度強く噛む。
「流君が、、、いけないんだからね。
オレにっ、あれ以上をくれたから、、、」
いやだ・・・。
「あ゛?」
急に言われても困るよね。
わかってる。わかってるのに。
本当はこんな事言いたく無いのに、
「・・・オレは、オレはねっ?
初めて自分に声を掛けてくれた、そこに在るのを認めてくれた、存在してるんだって、ただそれだけで良かった」
痛みは今はわからない。
ただただ溢れる言葉が止まらない。
邪魔だなんて言葉に嬉しく思う人なんて自分くらいだろう。
「流君は、たまたまオレが邪魔だったから声をかけただけかもしれないけど、、、オレにとっては、あの言葉だけで世界の全てだったの。
殺してくれるとも言ってくれた。」
なのに、
側に居てくれて、
話しかけたら何かしら応えてくれて、
歩み寄ろうとはしなかったけれど、そこに在ってくれた。
その全ては
伊呂波が存在してるんだって生きてていいんだよって思い知らせてくれるもので、、、
初めてしったんだ。
自分が透明人間じゃないって。
だから
暗闇が凄く恐ろしいものになった。
置いて行かれるのが怖くなった。
全部、全部
普通のはずなのに。
馬鹿みたいに彼に縋って置いて行かれないように必死で笑う。
今も困らせてるのはオレ。
もう、
知っちゃたんだ。
もう後には引き返せないんだよ。
だから、あなたがいらないなら
「おれ、いらないよね。」
自分自身が必要としていないんだから誰もいらないんだから、流君がいらないなら死んだって構わない。
「・・・勘違いしてねぇか」
ゆっくりと唇についた血を舐め、彼は言った。
「・・え」
「俺はあん時、選ばせてやるっつったんだ。テメェは何て言ったよ?あ?」
いつもと違う饒舌な彼の姿に絶句し、応える
「りゅ、、ゆーちゃん、の側にいたいって言ってた」
「俺はそれに応えた」
もう離せねぇ、俺のもんになんの?
「拒否権なんざあるか」
「うんっうんっ、、、」
次には強く顎を持たれ、重なっていた。
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