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事件というほどでもないと日向さんはいうが、もう一ヶ月も音信不通なのだ。部屋に帰って来ていない。
一連の事で知っているのはやはり日向さんだろうが、のらりくらりとかわされてしまっている。
「あ、良いところにいましたぁ」
やっと見つけた。
「何だどうした?珍しいなこんなとこに居んなんてよ」
飄々とした日向さんに淡々と。
「流君は死ぬんですか?」
「さぁ。どうだろうな、今回は俺は関われねぇ相手だ。もしかしたら死ぬかも知れねぇな」
日向さんは一歩も引かない。
「ひゅうがさん、ひゅうがさん、あの、おねがいがあります。」
ーー流君のところに行きたいんです。
そりゃ脅しだなと、日向さんが笑った。
「今行ったら、お前は巻き込まれて死んじまうだろうな。抗争って甘いもんじゃねぇよ。今戦争やってる主同士の机の上での駆け引きをしている。もちろんその場にも兵士はいる。」
「死ぬのはどこだって同じなんです。ぼくを生かしたのは彼だ。」
責任とってもらわないといけないんです、一人称を忘れて言った。
「責任?」
そしてうっそり笑った。
『彼が死ぬまえに、ぼくを殺してくれる約束だから』
◆◆◆◆◆◆
「ゆーちゃ、、ゆーちゃんっ」
固まったまま凝視した。伊呂波にとって初めての彼の表情。
ここはある戦場のチェスの上。
「むかえにきた」
「、、は。」
「むかえにきたぁ、ゆーちゃん遅いんだもん」
「・・・」
「これ持って来たんだよ。ね。ゆーちゃんはやく。」
ぼくを殺して。
鋭利な短剣を持つ伊呂波に、誰もが引いた。
彼の瞳がゆっくり細められる。流生の足が伊呂波に近づいた
「勝手に殺すんじゃねぇよ」
彼の口元は、僅かに上がっていた。
次の瞬間には伊呂波の意識はなかった。
「流生、俺がなんで伊呂波を連れて行かせたとおもう?
あいつこの俺に刃向けたんだぜ?くくっ。笑えるだろ
あん時、出会った時のお前にそっくりだったよ
こんな平和ボケした国で、まさか2人目に出会うとはなぁ。面白い」
彼が死んだら魔法がとけるーーぼく透明になんてなりたくないの
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