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何重にも重なった頭を貫くような音が、ホール全体を揺らす。
「な、なななにっ…ぇ?」
「来なすったァア!泣きたいまぢ泣きたいっ…、おっと動画動画♪王道はよ!」
自分が出した声もいっくんの声も掻き消される程にその音は大きく、咄嗟に耳を塞いだ。
しかしいっくんは、そんな事モノともせずに携帯の打つ速度を上げた。
そしてそれが人の声から発せられていると分かったのは、数秒後の事。
『キャーー!!いやぁああああ!!会長様ぁああ!!!』
『副会長様〜今日も麗しいです!!』
『書記様カッコいい〜!!』『会計様可愛い〜〜!』
慌てて振り返って音源を凝視すると、今まで御子息よろしく行儀良く振る舞っていた生徒達が、入口に向かって大群を作っていた。
この位置からだと、全く見えないので何事なのか分からない。
なにこれ気になる。
気になる!
「いっくん」
「間宮の奴遅い。ちゃんと働いてっかな…連絡こねー…何で何故だ」
「?」
「ここでフラグ折ったら、まぢ絞めてやる。末代まで呪う。いっそ今死ね」
いっくん、何やらお忙しい様子。
携帯の先端を赤く光らせ、ブツブツと神妙な顔つきで呟いている。内容は全く聞こえないけど。
はて…この状況説明お願いします!って感じだったのに。
うーむ。
ここはリゾットで我慢です
物凄く興味がそそられるのを落ち着かせて、まだ熱々のリゾットをスプーンで掬うとチーズの糸が美味しそうに伸びて食欲を誘った。
何か全部食べるのが勿体無い気もしてきた。
食欲には勝てずリゾットを頬張ると「なぁなぁ」と携帯を集団に向けたままのいっくんが顔を上げた。
「むぁ?なひ」
「あー。食べ終わってでいいって」
「んっ、も大丈夫です!」
勢いよく口の中のものを飲み込んで笑いかける。
食べ終わったのを確認すると、ニッと爽やかに笑った。
「そ。あんさー藍川サマ王道転入生になる気ない?」
「お、王道…?」
「ちゃちゃっとあの美形集団惚れさせてやるだけの簡単なお仕事」
「…うぇ?…あ。」
少し首を傾げながらピシリと親指で方向をさす。
でも、
そうは言ってるけど、オレに何かをやらせようという感じではない。
なんなら暇なので話し掛けましたって感じ。
生徒会の人達が生徒の間をゆうゆうと進んで一段上のVIPな空間へと上がっていく。
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