アナタが世界でボクが色。 | ナノ


その筋のイベント

「ふはぁっ。ぁはははっ……んや、はやいっ…いっくんすごっ……ふふ」



最初、驚きで回転が追い付かなく真っ白だった頭が、あまりの人を超えた速さに笑いが込み上げてきた。

端から見たら爆笑している生徒を小脇に抱えて、もの凄い速さで走っているイケメンくん、である。それも瞳を見違えるほど嬉々として

それにギョッとしている生徒なんか知らなくて、オレはいつかテレビで見たアトラクションを思い出して更に笑う。
いっくんも爆笑し出したオレを気に止めることなく速さを上げていった。


「よし。こんくらいから…」


走ること五分。降ろされたのは生徒が疎らに賑わい始めた広いホール前

ここは……どこ?

笑うのに疲れて、肩を軽く上下させながらこてんと首を捻る。
その間にもずんずんと進んで行くいっくんをとたとたと追いかけた。


「うん。やっぱここだ。あ、藍川サマこっちこっち」


「う?うん」


心ここに在らずないっくんに促されるままに、ホール奥の端のテーブル席へと座った。いっくんは、そわそわ落ち着かない感じだ。何度も携帯を開いて閉じてを繰り返している。

一体どうしたんだろ。
そしてここは一体…。

オレが心配そうに伺っていたのに気づいたのか、「あぁ」と視線が向むけられる


「次の時間も移動教室だし連れて来たけど、藍川サマって弁当じゃないっしょ?」


パチパチ、と瞬きをする。


「ぇ…あ…ううん。お弁当…」


…携帯気になる。


「ふーん。まぁいいじゃん。学食初めてならやり方教えるし」


お?
おぉー!
と言うことは、ここは学食というやつなのですねっ

少しイメージが違ってたから解らなかったけど、周りを見ると丸いテーブルが沢山あって、まだ少ない生徒達がちらほらと料理を食べていた。
もっと長ーいテーブルがあって向かい合って食べるのかと。


気になるのは
ホール入り口から見て奥、つまりオレ達がいる少し前に二メートル程の段差があって、その上にもテーブルがあるのに誰も上がろうとしないのが不思議。

VIP席かなぁ。
先生用とか。

流君なら迷わず行きそう。こっちよりは静かそうだし。
そう頭に過って振る。
んー…というか、まず人が集まる学食には行きたがらないかなぁ。

事実、お昼用のお弁当を朝作る時間が無かった時だって学食に誘ったのに、いらないの一言だった。
でもその時は、コンビニだけでも行こ?って言ったら機嫌が悪かったらしく睨まれて却下…。流君、昨日の夜から何も食べなかったのに。
つまり、
流君の胃は可笑しいのである。

おそらく、流君の考えは食べるものが無ければ食べなければいいだろ、という感じだと思われる。

それを昔から思い知らされて居るので、食べなきゃダメだよ!といつも口をすっぱくして言っていた。

そんなんでよくあの大きな身体を支えられなぁ、と感心しつつ心配。

…まぁ、そういうのが何回かあったという話。




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