アナタが世界でボクが色。 | ナノ


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数回目の授業終了の鐘が鳴る。次の授業は移動教室で、いっくんに軽く声を掛けられて席を立ち上がった。

あれから三時間授業受け(…てないけど。あー…う。ごめんなさい…)た所によると、前居たSクラスとは全く雰囲気が違っていたように思える

Sクラスの授業中は、私語が一切無く緊迫した空気だったのに対してBクラスは、最初こそ物珍しそうに視線を向けて緊張したような感じだったのに、今は授業中でも体を傾けて談笑していたりと賑わっていた

先生達もそれを全く気にしていない様子ですごく自由

あまりの違いにそれをいっくんに言ってみると「三年は受験控えてる奴いっし、何より相良サマ居んのに喋る奴勇者じゃね」と返ってきた

じゅけん?
…いやいやその前に
…そうなのか勇者なのか


「置いてくぜー藍川サマー」

「う…ぁ、うんっ」


いっくんはというと、クラスメイトとあまり話さないらしく授業中もずっと携帯を高速で連打している。
授業間の休み時間には、偶に少しだけ話かけてきてくれるけど、話の途中で気付くと携帯に向かっていたりして、余程重要な仕事をこなしてるんだなぁ…と感心

でもこれはこれで、実は居心地良かったりしているので、オレはひたすら難解なドリルに悪戦苦闘していた。

因みにいっくんは携帯を三台ほど持っていて、全部使いこなせているようなので驚きなのですよ。



◇◇◇◇











「むふふふフ………ふははははハハhぐほッげほッ!!」

それは午後の授業が終了して席を立とうと教科書を持ち上げた時だった。

物理室にまだ残っていた生徒達が、びくりと漫画のように肩を跳ねさせ声の主を凝視する。

彼らの視線の先には、


「おおおっしゃァアア!行くぜッ!藍川サマー!!!」


「は、はひっ…ぇ?」

豹変したいっくんこと三島郁くんである。
授業中も人と話さない分、(比較的)静かで表情も殆ど変わらなかったいっくんが、今は口角が上がりきって瞳がキラキラと輝いている。
もはや眩しいです。背中に太陽背負ってます!

まだ短い数時間の付き合いしかしていないけれど、その変わりようは明らかなものがある。


「えっう……ふわゎぁわっ!?」


そんな彼が、水を得た魚のように生き生きとした表情でオレを呼ぶのとほぼ同時に、ぐわっと訪れた浮遊感が更に頭の中をパニックへと誘う。

いっくんは、もがくのも忘れたパニック中のオレをよそに、比較的細い身体からどこからそんな力が出たんだと疑う程、いきなり小脇に抱え上げると猛ダッシュで風を切りさき廊下を駆けていく

凄い速さで通り過ぎていく止まった生徒達の顔は早すぎて見えなかったけど、きっと驚愕と困惑を張り付けているに違いない。

でも、そんな生徒達より一番驚いてるのは……
わかってくれますよね?ねっ?





オレなのですっ!























『こいつ、若干いやかなり可笑しいから』


ぐらぐらの視界の中
数時間前のそんな言葉が重さを増して聞こえた気がした。


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