アナタが世界でボクが色。 | ナノ


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「ふぁ…ぅ」

ふかふかのソファに寝そべると途端に欠伸が出た。
こんなに歩いたの初めてかもしれない。体のあちこちが鈍い痛みを訴えてくる。
ほんとに疲れた。

……んー。

やっぱり身体にも疲れは出ているようだ。

少し伸びをした途端、先輩にしてもらった湿布がズキズキと酷使した腫れを刺激した。


「…いたぁー」


じわりと自然に視界がぼやけた。
怪我する事が比較的多いオレだけど、やっぱり痛みはいつまでたっても慣れない。

あの先生に帰り道を聞こうと職員室に単身乗り込んだ(入るのに15分要した)はよかったのだけれど、「…藍川お前2ヶ月通ってたよな…それは大丈夫なのか…」そう呆れ声で少し哀れまれた。
ごめんなさいとしか言いようがない。
でもでも違うのですよ。ここは声を大にして(心の中で)言いたい。
これは方向音痴とかではなくっ、…いや確かに方向音痴という種族なのだけれど、…これまで職員室に来たことがなかったからで。
来た道を帰って、教室に行ったとしてもそこの道順すら先輩に教えて貰ったものだしっ

とも言えず、
周りの視線が突き刺さっているし「すみません…」と謝った。
なんか
謝ってばっかだ。


「あ、そだ」

切り替えるように、目に付いた両手程の大きさの箱と一枚のプリントを机からとった。

先に気になっていた箱を開けると、中には手のひらサイズの水色の機械。

お、おー!

少し興奮気味に箱から出して目の位置に掲げてみる。
流君の持ってるやつと色やデザインが少し違う気がするけど、これは携帯というものだ。
折り畳み式の画面を開いて、もう一度箱の中身に目を向ける。
箱の中にまだ説明書らしき本と充電器、あと簡素な便せんが入っていた。


"昨日お話した通り、学園での財布代わりとなる携帯をお送りします。
予め、私と流生の連絡先は登録済みです。何かありましたらお気軽にどうぞ。
故障や紛失がありましたら昨日の電話履歴から言って下さいね-雑賀-"

「…お、おー!」

昨日の今日で直ぐに届くとか手配速すぎる。さすが雑賀さん!


そして
おざなりに見た
宿題かと思っていたプリントの見出しには『体育祭』の文字。




はて、
体育祭とはなんだったかなぁ。

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