アナタが世界でボクが色。 | ナノ


初めての教室?


まさかの先輩の名前を聞き忘れて数分落ち込んだあと、次に会うとき教えて貰おうと奮い立たせて一本道の静かな廊下を足を庇いながらヒョコヒョコ歩いた。足の調子は頗るいい感じだ。
少し歩くと、ざわざわと特有の授業声や音が聞こえて今更ながら楽しみになってみたり緊張してみたり。


「……、えっと」


どうしよう…
何がどうしようって訳でもないけど、どうしようっ…!
いや、やっぱり緊張の方が断然勝ってる。

一度ゆっくり深呼吸。
一番手前の教室の壁を触りながら、組が刻まれているプレートを探す。


「ぁ…」


教室の反対側の窓から日が当たってプレートが主張している。
プレートの真下でじっと見ると、

えーと…『1-A』
たぶんもう一つ奥。
そう思ってまた壁にそってこそこそと歩く。

因みにS組は他のクラスと違う階にあったりする。なんか特に頭がいいクラス?で家柄もいい人がS組で環境も万全なように階を分けてるらしい。それからB〜D組までは、家柄順だった…たぶん。えっと、A組はS組みたいなもので…ぁーと…Eも何かあったかなっ。うん。そんな感じだと思う!
(うるおぼえパンフ参照)

そうこう考えてる内に
本命の『1-B』のプレートを見つけた。
そのままドアの銀色のとって部分をじっと睨みつける。草花の細かい細工がしてあるそれを時間稼ぎのように意味なく数えて、気を紛らわせる。

うー。…どうしよ
一難去ってまた一難ってこう言う時に使う気がする。

なんたってオレと流君、結構な頻度で遅刻と早退と欠席を繰り返していたので…(不可抗力)、授業中だろうと何だろうと流君なら構わず入って行けるんだけど…毎回申し訳なさ感と恥ずかしさと闘ってるオレにとってはひとりで入るのはちょっとばかり勇気がいる事だったり…。

と、とととりあえず!
ガラって入って
遅れてすみませんでしたって謝って、……あと
あ、自己紹介した方がいいのかなっ?流君の教室ではしなかったけど、オレの教室なわけだし。いやいやでも授業中にそれは邪魔?

色々考えて頭が混乱してきた。
も、もうここは男らしくずどーんと!

そう意気込み、勢いで手をとってにかけると勢い良くスライドさせ─「ぅぇっ?!」───られた。


「とっ?!!!」


開かれたドアの前から現れたスーツ姿の男の人が目を見開いて固まると、キーンコーンと授業終了の鐘が鳴り響いた。


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